ウルトラ先生の「力の図示」徹底解説!

~物理の"なぜ?"をスッキリ解消~

2.2.3 第3法則 (Third Law): 作用・反作用の法則 (Law of Action and Reaction) ~押したら押し返される!力はいつもペア

作用・反作用の法則って、なに?

ニュートンの運動の法則、最後のピース、それが第3法則「作用・反作用の法則」だよ。 これは、力の生まれ方に関する、とっても面白い法則なんだ。

考えてみて。壁を手でグッと押すと、なんだか壁からも押し返されているような感じがしない? ボートに乗って岸壁を押すと、ボートは岸壁から離れていくよね。ロケットが猛烈な勢いでガスを下向きに噴射すると、ロケット本体は上向きに飛んでいく。 これらはすべて、作用・反作用の法則が働いている証拠なんだ。

作用・反作用の法則を正確に言うと、こうなるよ。

物体Aが物体Bに力(作用 Action)を及ぼすとき、
物体Bは必ず物体Aに、大きさが等しく (Equal in magnitude)、一直線上にあり向きが反対 (Opposite in direction) の
力(反作用 Reaction)を及ぼし返す。

ポイントは、力は単独では絶対に存在しないということ。必ず「AがBに及ぼす力」と「BがAに及ぼす力」というペア (Pair) で現れるんだ。このペアの関係を作用・反作用の関係というよ。 二つの物体がお互いに力を及ぼし合っている状態、これを相互作用 (Interaction) とも言うんだ。

作用・反作用のペアをどうやって見つける?

作用・反作用のペアを見つけるには、コツがあるんだ。それは、力を言葉で表現してみること! 力を「(主語 A)(目的語 B) を (○○する) 」という形で言ってみるんだ。 そうしたら、その力の反作用は、主語と目的語を入れ替えたものになる!

例を見てみよう。

  • 作用:「 を 押す
    → 反作用:「 を 押し返す
  • 作用:「地球リンゴ を 引く (=リンゴに働く重力)」
    → 反作用:「リンゴ地球 を 引く (万有引力)」 (普段は意識しないけど、リンゴも地球を引っぱっているんだ!)
  • 作用:「足の裏 を 押す (=足の裏に働く垂直抗力)」
    → 反作用:「足の裏 を 押す
  • 作用:「おもり を 引く (=おもりに働く張力)」
    → 反作用:「おもり を 引く

図2:作用・反作用の例(ペアになる力は、異なる物体に働く!)

このように、作用と反作用は、必ず異なる物体に働く力のペアになっているんだね!

【超重要!】作用・反作用 と 力のつりあい は違うもの!

ここで、多くの人が混乱してしまうポイントが登場するよ! それは「作用・反作用のペア」と「力のつり合いの関係にある力のペア」を混同してしまうこと。 この二つはまったく別のものだから、しっかり区別しよう!

比較ポイント 力のつりあい 作用・反作用
力の働く相手 一つの物体に働く複数の力 二つの異なる物体の間で働く力のペア
力の関係 合力がゼロになる関係 互いに及ぼしあうペアの関係
結果 物体は静止または等速直線運動 (それぞれの物体がどう運動するかは、その物体に働く他の力との合力で決まる)

例:机の上の本で考えてみよう

机の上に置かれて静止している本で、具体的に見てみよう。

図3:机の上の本における力のつりあいと作用・反作用の関係

本に注目すると…

  • 本に働く力は、①重力(地球が本を引く力)②垂直抗力(机が本を押す力)の2つ。
  • 本は静止しているので、この①と②の力がつり合っている(大きさが等しく向きが反対)。これらは「本」という一つの物体に働いている。

次に、作用・反作用のペアを考えると…

  • ①重力(地球→本)の反作用は、①' 本が地球を引く力。これは「地球」に働く力。
  • ②垂直抗力(机→本)の反作用は、②' 本が机を押す力。これは「机」に働く力。

どうかな? 「力のつりあい」は一つの物体に働く力の関係、「作用・反作用」は二つの物体の間で働く力の関係だ、ということが分かったかな? ①と②はつり合っているけど、作用・反作用のペアではない。①と①'、②と②' がそれぞれ作用・反作用のペアだけど、これらは異なる物体に働くので、つり合いの関係にはないんだ。

力の図示をするときは、「注目物体に働く力だけを描く」のが基本だったね。だから、もし「本に働く力」を図示するなら、①と②だけを描く。①' や ②' は、それぞれ「地球」や「机」に働く力だから、本に働く力の図には描かないんだ。

作用・反作用の法則が活躍する場面

この法則は、身の回りのいろんな現象を説明するのに役立っているよ。

  • ロケットの打ち上げ:ロケットは燃焼ガスをものすごい勢いで下向きに噴射する(作用)。その反作用として、ガスがロケットを上向きに押し上げる力が働き、ロケットは飛んでいくんだ。
  • 歩く・走る:私たちは地面を後ろ向きに蹴る(作用)。すると地面が私たちを前向きに押し返してくれる(反作用)。この力で前に進むことができるんだ。泳ぐときも同じで、水を後ろに押す反作用で前に進む。
  • 衝突:ボールを壁に投げつけると、ボールが壁を押す(作用)と同時に、壁もボールを押し返す(反作用)。だからボールは跳ね返るんだね。

第3法則のまとめ

ニュートンの第3法則(作用・反作用の法則)のポイントをまとめると…

  • 力は単独では存在せず、必ずペア(作用・反作用)で現れる。
  • 作用と反作用は、大きさが等しく、向きが反対で、一直線上にあり、異なる二つの物体にそれぞれ働く。
  • 力のつり合いとは全く別の概念である!

【おさらい】ニュートンの3つの運動法則

これでニュートンの運動の法則がすべて揃ったね!もう一度、簡単におさらいしておこう。

  1. 第1法則(慣性の法則):力がつり合っていれば ($\sum \vec{F} = \vec{0}$)、加速度はゼロ ($a=0$)。物体は静止または等速直線運動を続ける。
  2. 第2法則(運動方程式):力がつり合っていなければ ($\sum \vec{F} \neq \vec{0}$)、その合力 $F$ と質量 $m$ と加速度 $a$ の間に $ma=F$ の関係が成り立つ。
  3. 第3法則(作用・反作用の法則):力 $F_{AB}$(A→B)があれば、必ず力 $F_{BA}$(B→A)が存在し、$F_{AB} = -F_{BA}$(大きさが等しく向きが反対)。

これらの法則を使いこなすことで、物体の運動を深く理解し、予測できるようになるんだ。

さあ、次はいよいよ、運動方程式を実際に使って、様々な状況で物体の運動を分析したり、力を計算したりする具体的な方法について、さらに詳しく見ていくよ!

このページで出てきた英単語 (English words)

Law of Action and Reaction (復習)
意味:作用・反作用の法則
Newton's third law is often called the Law of Action and Reaction.
意訳:ニュートンの第三法則はしばしば作用・反作用の法則と呼ばれます。
Action
意味:作用
The force exerted by the hand on the wall is the action.
意訳:手が壁に及ぼす力が作用です。
Reaction
意味:反作用
The force exerted by the wall on the hand is the reaction.
意訳:壁が手に及ぼす力が反作用です。
Pair
意味:ペア、対
Action and reaction forces always occur in pairs.
意訳:作用と反作用の力は常にペアで生じます。
Equal in magnitude
意味:大きさが等しい
The action and reaction forces are equal in magnitude.
意訳:作用と反作用の力は大きさが等しいです。
Opposite in direction
意味:向きが反対
The reaction force is opposite in direction to the action force.
意訳:反作用の力は作用の力と向きが反対です。
Interaction
意味:相互作用
Forces arise from the interaction between objects.
意訳:力は物体間の相互作用から生じます。