1.3.5 摩擦力 (Frictional Force) ~動きを邪魔する不思議な力~
摩擦力って、どんな力?
さあ、第1章で紹介する基本的な力のトリを飾るのは、摩擦力 (Frictional Force) だ! みんな、重い箱を押してもなかなか動かなかったり、自転車のブレーキをかけると止まったり、雪道を歩くと滑りやすかったりする経験はあるかな? これらは全部、摩擦力が関係しているんだ。
物理でいう摩擦力とは、物体が他の物体の表面 (Surface) と接触しながら動こうとするとき、または動いているときに、それらの面の間に働いて、物体の動きを妨げようとする力のことだよ。
図1:箱を押してもすぐには動かないのは、摩擦力が働いているから。
「動きを邪魔する力」と聞くと、なんだか悪者みたいに聞こえるかもしれないけど、実は摩擦力がないと私たちは困ってしまうんだ。 例えば、私たちが地面を蹴って歩けるのも、手で物をつかめるのも、摩擦力のおかげ。ツルツルの氷の上だとうまく歩けないのは、摩擦が小さいからなんだね。
摩擦力がどうして発生するのかというと、物の表面をミクロの目で見てみると、実はデコボコしていて、その粗さ (Roughness) が引っかかり合ったり、原子や分子レベルで引き合う力が働いたりするためだと考えられているよ(これはちょっと難しい話だから、ふーん、くらいで大丈夫!)。
摩擦力には2種類ある!?「止まっているとき」と「動いているとき」
摩擦力の面白いところは、物体の状態によって、その性質が変わることなんだ。 大きく分けて、摩擦力には次の2種類があるよ。
- 静止摩擦力 (Static frictional force)
物体がまだ動き出していない(静止している)ときに働く摩擦力のこと。外から力を加えても物体が動き出さないのは、この静止摩擦力が頑張って動き出すのを防いでくれているからなんだ。
- 動摩擦力 (Kinetic frictional force または Dynamic frictional force)
物体が実際に滑って動いているときに働く摩擦力のこと。動きを妨げようとするブレーキのような役割をするよ。
この2つの摩擦力は、力の大きさの決まり方や性質が違うから、別々に詳しく見ていく必要があるんだ。 なんだか、摩擦力って奥が深そうだね!
これから摩擦力について学ぶこと
この後のページでは、この2種類の摩擦力について、それぞれ以下のポイントを中心に学んでいくよ。
- それぞれの摩擦力がどんな時に働くのか?
- 摩擦力の向きはどう決まる?
- 摩擦力の大きさはどうやって計算するの?
- 静止摩擦力には「限界」がある? 最大摩擦力とは?
- 動摩擦力の大きさを決める動摩擦係数って何だろう?
- 摩擦力を力の図示でどうやって表現する?
摩擦力は、日常でたくさん経験する力だけど、物理で考えるとちょっとややこしい部分もある。でも、一つ一つ丁寧に見ていけば必ず理解できるから、一緒に頑張ろう!
まずは「静止摩擦力」から探っていこう!
それじゃあ、まずは物体が動き出すのを防いでくれる「静止摩擦力」の世界から探検してみよう! 押してもなかなか動かないあの力の秘密を解き明かしにいくよ。