1.3.4 弾性力 (Elastic Force) ~バネ (Spring)が元に戻ろうとする力~
弾性力って、どんな力?
みんな、びよーんと伸びるバネ (Spring) やゴムで遊んだことはあるかな? ボールが地面についてポーンと跳ね返ったり、弓を引いて矢を飛ばしたりするのも、実はこれから学ぶ弾性力 (Elastic Force) と深い関係があるんだ。
弾性力というのは、バネやゴムのように変形した物体が、元の形に戻ろうとするときに生じる力のこと。「弾性(だんせい)」というのは、力を加えて形が変わっても、力を取り去ると元に戻る性質のことを言うよ。
図1:バネは伸びても縮んでも、元に戻ろうとする弾性力を生じる。
この弾性力の中でも、特に「バネ」の弾性力は物理でよく登場するから、今回はバネを中心に学んでいこう!
バネの弾性力の3要素:どこに、どっちへ、どれくらい?
バネの弾性力を考える上で、まずとっても大事な基準があるんだ。それは…
基準点:自然長 (Natural length)
自然長 (Natural length) というのは、バネに何も力を加えていない、つまり、伸びても縮んでもいないときの、バネ本来の自然な長さのこと。 この自然長の位置が、弾性力を考える上での「スタート地点」になるんだ。
図2:バネの状態(自然長、伸び、縮み)
1. 弾性力の作用点:どこに働く?
バネの弾性力の作用点は、バネが物体に接触している端だよ。 もし、バネそのものの変形を考えるなら、バネを固定している壁などから受ける力も弾性力と関連してくるね。
2. 弾性力の向き:どっちの方向? 自然長に戻ろうとする向き!
弾性力の向きは、バネが自然長の状態に戻ろうとする向きだ。
- バネが自然長より伸びている場合:弾性力はバネが縮む向き(物体を自然長の位置へ引き戻す向き)に働く。
- バネが自然長より縮んでいる場合:弾性力はバネが伸びる向き(物体を自然長の位置へ押し出す向き)に働く。
図3:弾性力の向き (赤い矢印 F)
3. 弾性力の大きさ:フックの法則 $F = kx$
バネの弾性力の大きさは、イギリスの科学者ロバート・フックが見つけた法則、「フックの法則 (Hooke's Law)」で表されるんだ。
弾性力の大きさ $F$ [N] = ばね定数 $k$ [N/m] $\times$ 自然長からの変化量 $x$ [m]
$$ F = kx $$
それぞれの文字の意味を見てみよう。
- $F$:弾性力の大きさ(単位はニュートン N)
- $k$:ばね定数 (Spring constant)(単位はニュートン毎メートル N/m)
- これは、バネの「硬さ」や「強さ」を表す数値で、バネの種類によって決まっているよ。
- $k$ が大きいほど、同じだけ変形させるのにより大きな力が必要な、つまり「硬いバネ」ということになる。
- $x$:バネの自然長からの変化量(伸びた長さ、または縮んだ長さ)(単位はメートル m)
- ここが超重要! $x$ はバネ全体の長さじゃなくて、あくまで「自然長からどれだけ変わったか」という長さだよ。 例えば、自然長が10cmのバネが12cmに伸びたら、$x = 12\text{cm} - 10\text{cm} = 2\text{cm} = 0.02\text{m}$ となる。 もし7cmに縮んだら、$x = 10\text{cm} - 7\text{cm} = 3\text{cm} = 0.03\text{m}$ だね。(力の向きは逆になるけど、大きさの計算では変化した長さを正の値で使うよ)
フックの法則は、「弾性力の大きさは、バネの自然長からの伸びや縮みに比例する」ということを示しているんだ。たくさん伸ばせば、それだけ大きな力で元に戻ろうとする、ってことだね!
【例題1】ばね定数が $20 \text{ N/m}$ のばねがある。このばねを自然長の位置から $0.1 \text{ m}$ 伸ばしたとき、ばねに生じる弾性力の大きさは何Nかな?
【考え方】
ばね定数 $k = 20 \text{ N/m}$。
自然長からの伸び $x = 0.1 \text{ m}$。
フックの法則 $F = kx$ を使うと…
$F = 20 \text{ N/m} \times 0.1 \text{ m} = 2 \text{ N}$
【答え】2 N
【例題2】あるばねを自然長から $0.05 \text{ m}$ 縮めたところ、$5 \text{ N}$ の弾性力が生じた。このばねのばね定数 $k$ は何N/mかな?
【考え方】
弾性力の大きさ $F = 5 \text{ N}$。
自然長からの縮み $x = 0.05 \text{ m}$。
フックの法則 $F = kx$ より、$k = F/x$ だから…
$k = 5 \text{ N} / 0.05 \text{ m} = 100 \text{ N/m}$
【答え】100 N/m
弾性力の図示に挑戦!
弾性力の向き(自然長に戻ろうとする向き!)と、大きさ(フックの法則!)を意識して、図示する練習をしてみよう。 下の図の物体に働く弾性力を、矢印で描き込んでみてね。自然長の位置がどこかを考えるのがポイントだよ。 (このアプリでは、物体の位置を調整してバネの伸び縮みを変え、そのときの弾性力を描いてみよう。)
物体(四角)をドラッグしてバネの長さを変え、そのときの弾性力を観察しよう。
緑の線が自然長の位置だよ。弾性力の矢印は自動で表示されるよ。
【ちょっと豆知識】弾性限界 (Elastic limit)
フックの法則はとっても便利だけど、実はどんなに変形させても成り立つわけじゃないんだ。 バネをものすごーく強く引っぱりすぎたり、押しつぶしすぎたりすると、バネは元の形に戻らなくなってしまうことがある(針金がぐにゃっと曲がっちゃうような感じ)。 こうなると、フックの法則は使えなくなっちゃうんだ。
フックの法則がちゃんと成り立つ変形の範囲のことを弾性限界 (Elastic limit) って言うよ。 高校の物理で出てくる問題は、ほとんどの場合、この弾性限界の中でバネを使っていると考えて大丈夫だから安心してね!