ウルトラ先生の「力の図示」徹底解説!

~物理の"なぜ?"をスッキリ解消~

1.3.3 張力 (Tension) ~ (String)やロープ (Rope)がピンと張る力~

張力って、どんな力?

みんなは、綱引きをしたり、犬の散歩でリードを引っぱったり、天井からぶら下がっている照明を見たりしたことがあるかな? これらの場面で活躍しているのが、張力 (Tension) なんだ。

張力というのは、 (String) やロープ (Rope)、ケーブル (Cable)、鎖などがピンと張った状態で、その両端につながれた物体や、糸の途中にある物体を引く (Pull) 力のことだよ。

綱引きのイメージ

図1:綱引きでは、ロープに大きな張力が働いている。

ここで大事なのは、張力は必ず「引く力」だということ。糸やロープで物を押すことはできないよね? 糸がたるんでいたら、張力は働かないんだ。

高校物理では、多くの場合「理想的な糸 (Ideal string)」というものを考えるよ。これは、

  • 糸の質量が無視できる(とっても軽い!)
  • 糸が伸び縮みしない

という特別な糸のこと。現実の糸とは少し違うけど、こう考えることで問題をシンプルに捉えることができるんだ。

張力の3要素:どこに、どっちへ、どれくらい?

張力の「作用点」「向き」「大きさ」はどうなるか、詳しく見ていこう!

1. 張力の作用点:どこに働く?

張力の作用点は、糸やロープが物体に結びついている点だよ。 もし、糸の途中に働く力を考える場合は、その糸の断面を作用点と考えることもあるんだ。

図2:張力の作用点の例 (赤い矢印の根元が作用点)

2. 張力の向き:どっちの方向? 糸に沿って引く向き!

張力の向きは、常に糸やロープに沿って、物体を引っぱる向きだよ。

  • 天井から吊るされたおもりの場合、おもりに働く張力は糸に沿って上向き
  • 糸の一方の端を引っぱると、糸のもう一方の端につながれた物体も同じ向きに引かれるね。
  • 滑車 (Pulley) を使うと、糸の向きを変えることができるけど、張力は常に糸に沿って働くよ。

図3:張力の向き (赤い矢印 T)

3. 張力の大きさ:どれくらいの強さ? 状況によって変わる!でも大事な性質が!

張力の大きさも、垂直抗力と同じように、簡単な式でいつでも決まるわけではなく、状況によって変化するんだ。 多くの場合、力のつりあい (Equilibrium) や運動の法則(運動方程式)を考えて決めることになるよ。

でも、張力にはとっても重要な性質があるんだ。それは、「理想的な糸(軽くて伸び縮みしない糸)」を考えているとき…

  • 一本の糸の途中では、張力の大きさはどこでも同じ!
  • 質量が無視できる滑らかな滑車 (Pulley) を介して糸がつながっている場合、滑車の両側の糸の張力の大きさは同じ!(滑車は糸の向きを変えるだけ)

これは問題を解く上でめちゃくちゃ使えるテクニックだから、しっかり覚えておこう! 図2の右側の例で、物体1を引く張力Tと物体2を引く張力T'(本当はこれもTと同じ大きさになる)は、糸が同じなら同じ大きさになるんだ(作用・反作用の関係もあるけど、ここでは「一本の糸」という点に注目)。 図3の右側の例で、おもりを引っぱり上げている張力と、手で引いている部分の糸の張力は(滑車が理想的なら)同じ大きさになるんだよ。

【例題】質量 1kg のおもりを、天井から軽い糸で吊るして静止させた。このとき、糸がおもりを引く張力の大きさ T は何Nかな? ただし、重力加速度の大きさを $g = 9.8 \text{ m/s}^2$ とするよ。

【考え方】
おもりは静止しているので、上下方向の力はつり合っていると考えられるね。
おもりに働く鉛直下向きの力は重力 $W = mg$。
$W = 1 \text{ kg} \times 9.8 \text{ m/s}^2 = 9.8 \text{ N}$。
おもりに働く鉛直上向きの力は糸の張力 $T$。
力がつり合っているので、$T = W$ となるはずだ。

【答え】9.8 N

張力の図示に挑戦!

張力の性質、特に「向き」と「一本の糸なら大きさは同じ」という点に注意しながら、図示する練習をしてみよう! 下の図の物体たちに働く張力を、矢印で描き込んでみてね。 (このアプリでは、物体と糸の結び目あたりをクリックして、糸に沿って引かれる方向にドラッグすると矢印が描けるよ。)

物体に働く張力の矢印を描いてみよう。糸に沿って引く向きだよ!

  1. 左:天井から吊るされた青いボールに働く張力
  2. 中央:水平な床の上で、右向きに糸で引かれる赤い箱に働く張力
  3. 右:滑車を介して、緑の重りと黄色の重りが糸でつながれている。それぞれの重りに働く張力を描こう。(糸は一本だよ!)

張力はいろんな場面で大活躍!

張力は、物体を吊り下げたり、引っぱったり、連結したりと、物理の問題では本当によく登場する力だよ。 特に複数の物体が糸でつながれている場合や、滑車が出てくる問題では、張力の性質を正しく理解しているかが鍵になることが多いんだ。

重力や垂直抗力、そしてこれから学ぶ他の力と組み合わせて、複雑な状況でも正確に力の図示ができるように練習していこう!

このページで出てきた英単語 (English words)

Tension (復習)
意味:張力
The tension in the cable supports the bridge.
意訳:ケーブルの張力が橋を支えています。
String
意味:糸、ひも
A weight is hanging from a string.
意訳:おもりが糸からぶら下がっています。
Rope
意味:ロープ、綱
They pulled the car with a rope.
意訳:彼らはロープで車を引きました。
Cable
意味:ケーブル、太綱
Elevators are lifted by strong steel cables.
意訳:エレベーターは丈夫な鋼鉄のケーブルで持ち上げられます。
Pull
意味:引く、引っぱる
Tension is a pulling force.
意訳:張力は引く力です。
Ideal string
意味:理想的な糸(質量が無視でき、伸び縮みしない糸)
In many physics problems, we assume an ideal string.
意訳:多くの物理の問題では、理想的な糸を仮定します。
Along the string
意味:糸に沿って
Tension always acts along the string.
意訳:張力は常に糸に沿って働きます。
Pulley
意味:滑車
A pulley can change the direction of a force.
意訳:滑車は力の向きを変えることができます。