1.3.2 垂直抗力 (Normal Force) ~面が物体を押し返す力~
垂直抗力って、どんな力?
みんな、床の上に立っていたり、机の上に本を置いたりしたとき、床や机が私たちや本をしっかり支えてくれているのを感じるよね? もし床や机が支えてくれなかったら、私たちは重力に引かれてズブズブと地球の中心まで落ちていっちゃう…なんてことはないよね!
この「面が物体を支える力」のことを、物理では垂直抗力 (Normal Force) と呼ぶんだ。 「垂直」というのは、面に対してまっすぐ90度の角度っていう意味。「抗力」は「抵抗する力」とか「押し返す力」という意味だよ。 つまり、垂直抗力は、物体が面にめり込もうとするのを、面が垂直な向きに押し返して防いでくれる力なんだ。
図1:机の上の本。机が本を垂直抗力で支えている。
この力は、物体が何かの面(床、壁、テーブル、斜面など)に触れているときにだけ働く接触力 (Contact force) の一種だよ。
垂直抗力の3要素:どこに、どっちへ、どれくらい?
さて、垂直抗力の「作用点」「向き」「大きさ」はどうなるのかな?
1. 垂直抗力の作用点:どこに働く?
垂直抗力は、物体と面が接触している面 (Contact surface) 全体から働く力なんだ。 でも、力の図示をするときは、その接触面全体に均等に働いていると考え、代表して接触面の中央あたりに作用点があるとして描くことが多いよ。
図2:垂直抗力の作用点の例 (赤い矢印の根元が作用点)
2. 垂直抗力の向き:どっちの方向? 面に対して常に垂直!
垂直抗力の「垂直」って言葉が超重要! 垂直抗力の向きは、物体が接している面に対して、必ず垂直(90度)な向きで、物体を押す向きなんだ。
- 水平な床や机の上にある物体なら、垂直抗力は鉛直上向き。
- 壁に押し付けられた物体なら、垂直抗力は壁から水平に押し返す向き。
- そしてここが一番大事! 斜面の上にある物体の場合、垂直抗力は斜面に対して垂直な向きになるんだ。つまり、鉛直上向きじゃないってこと!これは重力の向き(常に鉛直下向き)としっかり区別しよう。
図3:垂直抗力の向き (赤い矢印 N)
この「斜面での垂直抗力の向き」は、テストでもよく狙われる超重要ポイントだよ!
3. 垂直抗力の大きさ:どれくらいの強さ? 状況によって変わる!
垂直抗力の大きさは、重力の大きさ $W=mg$ のように簡単な式でいつでもパッと決まるわけじゃないんだ。これがちょっとトリッキーなところ。 垂直抗力の大きさは、物体が面を押す力の大きさに応じて、面が押し返す力だから、状況によって変化するんだ。
- 水平な床に物体が静止している場合: このときは、物体が下にめり込もうとするのを防ぐために、重力とちょうど同じ大きさで反対向きの垂直抗力が働く。だから、$N = mg$ となることが多いよ。(図3の左側)
- 物体を上から手で押さえつけている場合: このときは、重力に加えて手で押す力も面にかかるから、垂直抗力は $mg$ よりも大きくなるんだ。
- 斜面上の物体の場合: このときは、重力の一部分だけが斜面を垂直に押す力になるから、垂直抗力は $mg$ よりも小さくなるんだ。(図3の右側、$N$ の矢印が $W$ より短いね!)
つまり、垂直抗力の大きさは、「物体が面から離れず、かつ面にめり込まないように、面が"がんばって"押し返す力」とイメージするといいかもしれないね。 その具体的な大きさは、多くの場合、力のつりあい (Equilibrium) や運動の法則(運動方程式)を考えて決めることになるんだ。これは後の章で詳しく学んでいくよ!
【例題】質量 2kg の本が、水平な机の上に静かに置かれている。このとき、本に働く垂直抗力の大きさは何Nかな? ただし、重力加速度の大きさを $g = 9.8 \text{ m/s}^2$ とするよ。
【考え方】
本は水平な机の上で静止しているので、上下方向の力はつり合っていると考えられるね。
本に働く鉛直下向きの力は重力 $W = mg$。
$W = 2 \text{ kg} \times 9.8 \text{ m/s}^2 = 19.6 \text{ N}$。
本に働く鉛直上向きの力は垂直抗力 $N$。
力がつり合っているので、$N = W$ となるはずだ。
【答え】19.6 N
(注:これは水平な面で他に力が働いていない単純な場合だよ! いつも $N=mg$ とは限らないから気をつけてね。)
垂直抗力の図示に挑戦!
垂直抗力の性質、特に「向き」に注意しながら、図示する練習をしてみよう! 下の図の物体たちに働く垂直抗力を、矢印で描き込んでみてね。 作用点は接触面の中央、向きは面に垂直、大きさは状況に応じて(今は他の力とのバランスを想像して大体でOK)。 (このアプリでは、物体の接触面あたりをクリックして、面に垂直と思われる方向にドラッグすると矢印が描けるよ。)
物体に働く垂直抗力の矢印を描いてみよう。向きがポイント!
- 左の水平な床の上の青い箱
- 真ん中の斜面上の赤いブロック
- 右の壁に押し付けられた緑の物体(壁からの垂直抗力を描こう)
垂直抗力と重力の違いと関係
垂直抗力と重力は、どちらも物体によく働く力だけど、いくつか大切な違いがあるよ。
- 働く条件:垂直抗力は物体が面に接触している時だけ働く「接触力」。重力は物体が離れていても(例えば空中でも)働く力。
- 向き:垂直抗力は面に垂直。重力は常に鉛直下向き。
- 大きさ:垂直抗力の大きさは状況によって変わる。重力の大きさは $mg$ で(その場所では)ほぼ一定。
よく「垂直抗力と重力はつり合っている(同じ大きさで反対向き)」って聞くかもしれないけど、それはあくまで「水平な面に物体が静止していて、他に力が働いていない」という特定の状況での結果なんだ。 いつでもそうなるわけじゃないから、混同しないようにしようね!