1.3.1 重力 (Gravity) ~地球がみんなを引っ張る力~
重力って、どんな力?
さあ、いよいよ物理のスター選手たちとの冒険が始まるよ!最初の力は、重力 (Gravity) だ! 「重力」って言葉、聞いたことあるよね?リンゴが木からポトンと落ちたり、私たちがジャンプしても必ず地面に戻ってきたりするのは、全部この重力のおかげ(?)なんだ。
もっと詳しく言うと、重力というのは、質量 (Mass) を持つ物体どうしが、お互いに引き合う力のことなんだ。これを「万有引力(ばんゆういんりょく)」とも言うよ。 でも、高校の物理(特に力学の最初の方)で「重力」と言うときは、だいたい「地球が私たちの身の回りにある物体を引っぱる力」のことを指すんだ。 君の体重計が示す「重さ」も、実はこの地球の重力の大きさを測っているんだよ。
図1:リンゴが木から落ちるのは重力のため
重力の3要素:どこに、どっちへ、どれくらい?
どんな力も「作用点」「向き」「大きさ」の3要素で表せるんだったね。重力の場合はどうなるか見ていこう!
1. 重力の作用点:物体のどこに働く?
重力は、物体全体に働く力だけど、力の図示をするときには、物体の重心 (Center of gravity または Center of mass) という一点にまとめて働くものとして考えるんだ。 重心っていうのは、その物体の「質量の中心」みたいなところ。
- 形が均一な棒なら、ちょうど真ん中。
- きれいな円盤や球なら、その中心。
- 四角い箱なら、対角線の交点(つまり中心だね)。
複雑な形の物体の重心を見つけるのはちょっと難しいけど、最初はだいたい「物体の真ん中あたり」と考えておけば大丈夫だよ。
図2:いろいろな形の物体の重心の例 (赤い点が重心)
2. 重力の向き:どっちの方向?
地球が物体を引っぱる重力の向きは、ズバリ「地球の中心に向かう向き」だよ。 でも、私たちの身の回りでは、地球はものすごく大きくて地面は平らに見えるよね? だから、普通はもっと簡単に「鉛直下向き (Vertically downward)」って言ってOKなんだ。 「鉛直」っていうのは、地面に対してまっすぐ垂直ってこと。建物の壁とか、糸におもりを吊るしたときの糸の向きが鉛直だよ。
図3:重力は地球の中心へ (地表付近では鉛直下向き)
たとえ物体が斜面の上にあっても、空中に投げられていても、重力の向きは常に鉛直下向きだよ! これはとっても大事なポイントだから、絶対に間違えないようにしようね。
3. 重力の大きさ:どれくらいの強さ? $W = mg$
重力の大きさは、物体の質量 (Mass) $m$ [kg] と、その場所の重力加速度 (Gravitational acceleration) $g$ [$\text{m/s}^2$] を使って、次のように表されるんだ。
重力の大きさ $W$ [N] = 質量 $m$ [kg] $\times$ 重力加速度 $g$ [$\text{m/s}^2$]
$$ W = mg $$
この重力の大きさのことを、特に重さ (Weight) と呼ぶこともあるよ。 「質量」と「重さ」はよく似ているけど、物理では違う意味を持つから注意しよう。
- 質量 $m$:物体そのものが持つ、物質の量のこと。どこへ行っても変わらないよ。(単位:kg キログラム)
- 重さ $W$ (重力の大きさ):物体に働く重力の大きさのこと。場所(例えば地球の上か月の表面か)によって変わる力だよ。(単位:N ニュートン)
重力加速度 $g$ は、地球の表面近くではだいたい $g = 9.8 \text{ m/s}^2$ という一定の値なんだ。これは「1秒間に $9.8 \text{ m/s}$ ずつ速さが変化する」という意味だけど、今は「重力の大きさを計算するための特別な数字」くらいに思っておけばOK。 問題によっては、計算を簡単にするために $g = 10 \text{ m/s}^2$ として計算することもあるよ。
【例題】質量が 5kg のスイカに働く重力の大きさは何Nかな? ただし、重力加速度の大きさを $g = 9.8 \text{ m/s}^2$ とするよ。
【考え方】
スイカの質量 $m = 5 \text{ kg}$。
重力加速度 $g = 9.8 \text{ m/s}^2$。
重力の大きさ $W = mg$ の式を使うと…
$W = 5 \text{ kg} \times 9.8 \text{ m/s}^2 = 49 \text{ N}$
【答え】49 N (ニュートン)
重力の図示に挑戦!
さあ、重力の3要素が分かったところで、実際に図示する練習をしてみよう! 下の図の物体たちに働く重力を、矢印で描き込んでみてね。 ポイントは、作用点(だいたい物体の中心でOK)、向き(常に鉛直下向き!)、そして矢印の長さ(質量が大きいほど長く)だよ。 (このアプリでは、物体の中心をクリックして下にドラッグすると、鉛直下向きの矢印が描けるよ。)
物体(四角や円)の中心をクリックして、真下にドラッグし、重力の矢印を描いてみよう。
- 左の青い箱 (質量 普通)
- 真ん中の赤いボール (質量 小さい)
- 右の緑の大きな箱 (質量 大きい)
- 斜面上の黄色いブロック (質量 普通)
特に斜面の上にある物体でも、重力は必ず鉛直下向きに描くんだよ! 間違えやすいから気をつけてね。
重力は、だいたいいつもいる相棒
地球上で起こる物体の運動を考えるとき、この重力はほとんどの場合、無視できない大切な力だよ。 問題文で「空気抵抗は無視する」と書かれていても、重力はしっかり考えて図示する必要があることが多いんだ。
常に私たちの足元(地球の中心)に向かって働き続けている力、それが重力だということを覚えておこう!