03-04: 言葉をハッキリ伝えよう~Articulation(アーティキュレーション:滑舌)トレーニング~
前のページでは、ハミングで声の響きを感じ、クリアな母音を発声する練習をしましたね。豊かな響きと、はっきりとした母音は、良い歌声の土台です。
しかし、どんなに良い声でも、言葉がモゴモゴしていては、歌詞の内容が聞き手に伝わりません。そこで重要になるのが、「articulation(アーティキュレーション)」、日本語でいう「滑舌(かつぜつ)」です。滑舌が良いと、歌詞の一つ一つの言葉が明瞭になり、歌の表現力が格段にアップします。俳優さんやアナウンサーだけでなく、歌手にとっても滑舌は命なんですよ!
滑舌って何? なぜ悪くなるの?
「滑舌」とは、言葉をスムーズかつ明瞭に発音する能力のことです。「滑舌が悪い」というのは、言葉が聞き取りにくかったり、特定の音がうまく言えなかったりする状態を指します。では、なぜ滑舌が悪くなってしまうのでしょうか?主な原因としては、以下のようなことが考えられます。
- 口周りの筋肉の動きが悪い: 舌、唇、あごなどの筋肉が十分に動いていなかったり、硬くなってしまっていたりする。
- 発音時の舌の位置や口の形が不適切: 正しい音を出すための舌の位置や口の開け方ができていない。
- 話し方のクセ: 早口すぎたり、逆に口の中でモゴモゴと話すクセがあったりする。
でも大丈夫!滑舌は、適切なトレーニングで必ず改善できます。
滑舌を良くするための4つの基本
滑らかな発音のためには、以下の4つのポイントを常に意識しましょう。
- 口をしっかり開ける:特に母音(あ・い・う・え・お)を発音するときは、それぞれの母音に合った正しい口の形を意識し、しっかりと口を開けましょう。
- 舌をよく動かす:舌は言葉を作る上で非常に重要な役割を果たします。舌の筋肉を柔軟にし、スムーズに動かせるようにしましょう。
- 唇をしっかり使う:唇の形や動きも、言葉の明瞭さに大きく関わります。「パピプペポ」や「マミムメモ」などは特に唇の動きが大切です。
- ゆっくり、丁寧に発音する:最初から速く言おうとせず、一音一音を大切に、はっきりと発音することを心がけましょう。正確さが身についてから、徐々にスピードを上げていきます。
滑舌トレーニングの具体的な方法
それでは、具体的な滑舌トレーニングを見ていきましょう。
1. 口周りのストレッチ・準備運動
発音練習の前に、口周りの筋肉をほぐして動きやすくしましょう。
- 頬を風船のように大きく膨らませたり、逆に思い切りへこませたりを繰り返す。(左右片方ずつも)
- 唇を「うー」の形に思い切り突き出したり、「いー」の形に横に大きく引いたりするのを繰り返す。
- 舌を「ベー」と前に長く突き出したり、上下左右に動かしたり、鼻やあごにつけるように伸ばしたり、口の周りをぐるりと一周させたりする。
- 口をゆっくりと「あーぐあーぐ」と大きく開け閉めする。
2. 母音・子音の練習
クリアな母音は基本中の基本です。前のページで練習した母音の発声を再確認し、さらに子音と組み合わせた練習も行いましょう。一音一音、口の形や舌の位置を意識して、はっきりと発音します。
- 母音の連続:「あえいうえおあお」「いうえおあえいお」など、順番を変えて滑らかに。
- 各行の練習:
- ア行~ワ行:「あかさたなはまやらわ」を、それぞれ「あ段・い段・う段・え段・お段」で。 例:「あかさたなはまやらわ」「いきしちにひみいりい(wi)」「うくすつぬふむゆるう」…
- 苦手な子音を重点的に:
・サ行(さしすせそ):息が漏れすぎないように。舌先を下の歯の裏に軽くつけ、隙間から息を出す。
・タ行(たちつてと):舌先で上の歯茎をしっかり弾く。「ち」「つ」は特に注意。
・ラ行(らりるれろ):舌先を上の歯茎で素早く弾く。タングトリルの練習も効果的。
3. 早口言葉 (Tongue Twisters タング・ツイスターズ) に挑戦!
早口言葉は、楽しみながら口周りの筋肉を鍛え、滑舌を良くするのに最適なトレーニングです。下のアプリで色々な早口言葉に挑戦してみましょう!
早口言葉道場
「次の早口言葉」ボタンを押して、表示された言葉を練習してみよう!
最初はゆっくり、はっきり。慣れたら少しずつスピードアップ!
4. 歌詞の朗読
歌いたい曲の歌詞を、まずはメロディーをつけずに「朗読」してみましょう。一音一音をはっきりと、言葉の意味や感情を込めながら読むことで、発音の練習になるだけでなく、歌の表現力も深まります。特に言いにくい箇所は、重点的に練習しましょう。
滑舌練習の際の注意点
- 無理はしない: 口周りの筋肉も使いすぎると疲れます。疲れたなと感じたら、少し休憩を挟みましょう。
- 力みすぎない: はっきり発音しようとしすぎて、顔や肩に余計な力が入らないように注意しましょう。あくまでリラックスして。
- 鏡でチェック: 鏡を見ながら、自分の口の動きや舌の位置が正しいか確認しながら行うと、より効果的です。
滑舌は、一日にして成らず。でも、毎日のちょっとした練習の積み重ねが、必ずあなたの言葉をクリアにし、歌のメッセージをより深く、より魅力的に伝える力へと変わっていきます。楽しみながら続けていきましょう!