03-03: Humming(ハミング)とVowel(母音)で響きを磨こう~「あえいおう」をクリアに~
リップロールやタングトリルで、声帯や口の周りの筋肉がだいぶリラックスしてきたのではないでしょうか?ウォームアップで体が温まってきたところで、次はいよいよ「響きのある声」を出すための本格的な練習に入りましょう!
このページで取り上げるのは、「Humming(ハミング)」と「Vowel(ボウエル:母音)」の発声練習です。これらは、あなたの声の響きを豊かにし、言葉を明確に伝えるための基礎となる、非常に大切なトレーニングです。
Humming(ハミング)で「響き」の感覚を掴もう
ハミングとは、口を閉じたまま「ンーーー」と鼻歌のように声を出すことです。簡単そうに聞こえますが、実は声の響きを感じ取るための素晴らしい練習方法なんですよ。
どうしてハミングが良いの?
- 声帯に優しい:口を開けて大きな声を出すよりも、声帯への負担が少なく、無理なく発声できます。
- 共鳴を感じやすい:ハミングをすると、声が顔の前面(特に鼻の周り、頬骨、唇など)で振動し、ビリビリとした感覚(=resonance:レゾナンス、共鳴)を感じやすくなります。この「顔の前で響かせる感覚」は、通る声を出すために非常に重要です。この響きの場所を「マスク」と呼ぶこともあります。
- 響きのポイント探し:どこで一番響きを感じるかを探ることで、自分にとって最適な声の響かせ方を見つける手助けになります。
ハミングのやり方
- リラックスした正しい姿勢(立っていても座っていてもOK)をとります。
- 口を軽く閉じ、上下の歯も軽く開けておきます(食いしばらないように)。舌もリラックスさせましょう。
- 腹式呼吸でゆっくりと息を吸い込みます。
- 「ンーーーーー」と、できるだけ長く、一定の音程と声量でハミングします。最初は出しやすい音の高さでかまいません。
- このとき、鼻の付け根、頬骨のあたり、唇などがビリビリと振動するのを感じましょう。それが「響き」の感覚です。もし感じにくい場合は、音の高さを少し変えたり、息の量を調整したりしてみてください。
- 慣れてきたら、低い音から高い音へ、高い音から低い音へと、ハミングで音程を滑らかに変化させてみましょう。
Animation(アニメーション)で見てみよう!ハミングの響きのイメージ
下の「再生」ボタンを押すと、ハミングをしたときに顔のどのあたりで声が響くかのイメージがアニメーションで見られます。
クリアなVowel(母音)発声:言葉の土台をしっかり作る
ハミングで声の響きの感覚を掴んだら、次はその響きを「言葉」に乗せる練習です。その基本となるのが、日本語の「あ・い・う・え・お」といった母音をクリアに発声することです。
なぜクリアな母音が大切?
- 歌詞がはっきり伝わる:母音が明瞭だと、歌の言葉が聞き取りやすくなり、歌詞に込められたメッセージがストレートに伝わります。
- 声の響きが豊かになる:母音は声の響きを作りやすい音です。それぞれの母音を正しい口の形で発声することで、より豊かな響きが得られます。
- 口周りの筋肉のトレーニング:「あ・い・う・え・お」では、それぞれ口の形や舌の位置が大きく変わります。これを意識して練習することで、口周りの筋肉(表情筋や舌筋)が鍛えられ、滑舌の改善にもつながります。
各母音の発声ポイントと口の形
それぞれの母音を出すときの、口の形と舌の位置のポイントです。鏡を見ながら確認してみましょう。
あ (a)
口を自然に大きく開け、舌はリラックス。喉の奥も開く。
い (i)
口を横にやや引く。舌の中ほどが盛り上がる。
う (u)
唇を丸くすぼめ前に。舌の奥が少し上がる。
え (e)
「い」の口から少し縦に開く。舌は「い」と「あ」の中間。
お (o)
唇を丸く、縦に開く。喉の奥も丸く開く。
母音の発声練習方法
1. ハミングから母音へつなげる
まずハミングで顔の前面の響きを確認します。その響きを保ったまま、ゆっくりと「ンー(ハミング)→アーアーアー…」「ンー→イーイーイー…」というように、各母音につなげてみましょう。響きの場所が変わらないように意識するのがポイントです。
2. 母音を滑らかにつなげる
「あーえーいーうーえーおーあーおー」というように、一つの母音から次の母音へ、声の響きや音程を保ったまま滑らかに変化させる練習をします。口の形や舌の位置がスムーズに変わるように意識しましょう。
3. 各母音を長く伸ばす(ロングトーン)
腹式呼吸でしっかり息を吸い、それぞれの母音(「あー」「いー」など)を、一定の音程・声量でできるだけ長く伸ばしてみましょう。声が揺れたり、途中で息苦しくなったりしないように、お腹で息をしっかり支えます。
4. リズミカルに発声する
メトロノーム(BPM60~80くらいから)に合わせて、「あ・あ・あ・あ」「い・い・い・い」というように、1拍に1回ずつ、歯切れよく各母音を発声してみましょう。お腹で息をポンポンと押し出すような感覚です。
響きを意識するコツ
- 「声を前に遠くへ飛ばそう!」と意識しすぎると、喉に力が入りやすいです。それよりも、「自分の体の前の方(顔のマスク部分や胸の上部など)で声を振動させ、響かせる」というイメージを持ちましょう。
- 手を顔の前にかざしてみて、ハミングや母音を発声したときに、息や声の振動(響き)が手に伝わってくるか感じてみるのも良い方法です。
ハミングで響きのポイントを見つけ、その響きをクリアな母音に乗せていく。この練習を続けることで、あなたの声は見違えるほど豊かで、よく通る声になるはずです。根気強く取り組んでみましょう!