第1章 場合の数 ~すべての場合を数え上げよう~
1-3: 組み合わせCombination ~選ぶだけで順番は関係ない~
前回は「順列Permutation」を学んだね。順列では、選んだものをどんな順番で並べるかがとても重要だった。例えば、A君とB君がリレーで走る順番は、「A君が1番、B君が2番」と「B君が1番、A君が2番」では違うものとして数えたよね。
今回のテーマは「組み合わせCombination」。組み合わせでは、順番は気にしないんだ。ただ「どのメンバーを選ぶか」だけが問題になる。例えば、掃除当番にA君とB君が選ばれた場合、「A君とB君」でも「B君とA君」でも、選ばれたメンバーは同じだから、同じ一組として数えるよ。
組み合わせCombination とは?
組み合わせCombination とは、異なるいくつかのものの中から、順番を考えずに一部を選んだときの、その「組」の総数のことだよ。
ポイントは「異なるもの」から「選ぶだけ」で、「順番は関係ない」という点だ。
日常ではこんな場面で使われるよ:
- クラスの代表を3人選ぶ(選ばれた3人に序列はない場合)
- 好きな果物をいくつか選んでフルーツポンチを作る(どの果物をどの順番で入れたかは関係ない)
- トランプのポーカーで、最初に配られる5枚の手札(手札の中でカードの順番は関係ないよね)
例題1:3人から2人を選ぶ
A, B, C の3人の中から、掃除当番を2人選ぶ方法は何通りありますか?
考え方(書き出し):
選ばれる2人の組は…
- {A, B} (A君とB君)
- {A, C} (A君とC君)
- {B, C} (B君とC君)
の3通りだね。{B, A} は {A, B} と同じ組なので、1つとして数えるよ。
順列と比べてみよう:
もし、選んだ2人に「1番目の当番」「2番目の当番」のように順番をつけるなら、これは順列になる。
$_3 P_2 = 3 \times 2 = 6$ 通り (AB, BA, AC, CA, BC, CB)
組み合わせでは、例えば {A, B} という組に対して、順列では AB と BA の2つの並び方がある。この2つの並び方 (つまり $2! = 2 \times 1 = 2$ 通り) を1つの組として見ているんだね。
だから、順列の場合の数を、選んだものの並び順の場合の数で割ると、組み合わせの場合の数になるんだ。
$ \frac{{}_3 P_2}{2!} = \frac{6}{2} = 3 $ 通り
答え: 3通り
例題2:4つのボールから3つを選ぶ
赤、青、黄、緑の4つの異なる色のボールがあります。この中から3つのボールを選ぶ方法は何通りありますか?
考え方(書き出し):
選ばれる3つのボールの組は…
- {赤, 青, 黄}
- {赤, 青, 緑}
- {赤, 黄, 緑}
- {青, 黄, 緑}
の4通りだね。
順列と比べてみよう:
もし、選んだ3つのボールを一列に並べるなら、順列で $_4 P_3 = 4 \times 3 \times 2 = 24$ 通り。
選んだ3つのボール(例えば赤、青、黄)の並べ方は $3! = 3 \times 2 \times 1 = 6$ 通りあるよね。(赤青黄, 赤黄青, 青赤黄, 青黄赤, 黄赤青, 黄青赤)
組み合わせでは、この6通りの並び方をすべて同じ1つの組 {赤, 青, 黄} と見なすんだ。
$ \frac{{}_4 P_3}{3!} = \frac{24}{6} = 4 $ 通り
答え: 4通り
組み合わせの記号 C を使ってみよう
組み合わせの場合の数を表す記号もあるよ!
異なる $\mathbf{n}$ 個のものから 異なる $\mathbf{r}$ 個を選んで組を作る組み合わせの場合の数を、次のように書くよ。
$_n C_r \quad \text{または} \quad C(n, r) \quad \text{または} \quad \binom{n}{r}$
読み方は「エヌ・シー・アール」や「シー・エヌ・アール」、「$n$ 個から $r$ 個取るコンビネーション」などだよ。
計算方法は、対応する順列 $_n P_r$ を、選んだ $r$ 個のものの並び順 $r!$ で割るんだ。
$_n C_r = \frac{{}_n P_r}{r!} = \frac{n \times (n-1) \times \dots \times (n-r+1)}{r \times (r-1) \times \dots \times 1}$
また、階乗を使うと次のようにも書けるよ。(階乗 $n!$ は、$n \times (n-1) \times \dots \times 1$ のこと。$0! = 1$ と約束するよ。詳しくは階乗のページでね!)
$_n C_r = \frac{n!}{r!(n-r)!}$
さっきの例題を記号で表すと…
- 例題1(3人から2人を選ぶ): $n=3, r=2$ なので、
$_3 C_2 = \frac{{}_3 P_2}{2!} = \frac{3 \times 2}{2 \times 1} = 3$ 通り - 例題2(4つのボールから3つを選ぶ): $n=4, r=3$ なので、
$_4 C_3 = \frac{{}_4 P_3}{3!} = \frac{4 \times 3 \times 2}{3 \times 2 \times 1} = 4$ 通り
組み合わせの便利な性質
組み合わせには、計算を楽にしてくれる便利な性質があるよ。
- $_n C_r = {}_n C_{n-r}$
例えば、5人の中から3人の代表を選ぶ ($ {}_5 C_3 $) のは、5人の中から代表に「選ばない」2人を選ぶ ($ {}_5 C_{5-3} = {}_5 C_2 $) のと同じ場合の数になるんだ。
$_5 C_3 = \frac{5 \times 4 \times 3}{3 \times 2 \times 1} = 10$ 通り
$_5 C_2 = \frac{5 \times 4}{2 \times 1} = 10$ 通り。ほら、同じだね!
計算するとき、$r$ が大きい場合は $n-r$ に置き換えると計算が楽になることがあるよ。(例:${}_{10} C_8$ より ${}_{10} C_2$ の方が計算しやすい)
- $_n C_0 = 1$
$n$ 個のものから何も選ばない方法は、「選ばない」という1通りだけ。式で書くと $\frac{n!}{0!(n-0)!} = \frac{n!}{1 \cdot n!} = 1$ となるよ(ここで $0!=1$ が使われる)。
- $_n C_n = 1$
$n$ 個のものから $n$ 個全部を選ぶ方法は、「全部選ぶ」という1通りだけ。式では ${}_n C_n = {}_n C_{n-n} = {}_n C_0 = 1$ となるね。
- $_n C_1 = n$
$n$ 個のものから1個を選ぶ方法は、$n$ 通りあるのは直感的にもわかるね。式では $\frac{n}{1} = n$ だ。
順列と組み合わせの使い分けは?
ポイント | 順列 (Permutation) | 組み合わせ (Combination) |
---|---|---|
順番は? | 大切! 区別する | 関係ない! 区別しない |
キーワード | 並べる、配置する、役職を決める、~番目 | 選ぶだけ、グループを作る、代表を選ぶ(役職区別なし) |
例 (A,B,Cから2つ) | AB, BA, AC, CA, BC, CB (6通り) | {A,B}, {A,C}, {B,C} (3通り) |
記号 | $_n P_r$ | $_n C_r$ |
問題文をよく読んで、「選んだ後、それらを並べる必要があるか?」「順番が変わると違うものとして数えるべきか?」をしっかり考えよう!
組み合わせの練習問題
問題1:代表選び
7人の生徒の中から、3人の学級代表を選ぶ方法は何通りありますか?(ただし、3人の代表に役職の区別はありません)
考え方: 7人から3人を選ぶ「組み合わせ」だね。順番は関係ない。
$_7 C_3 = \frac{7 \times 6 \times 5}{3 \times 2 \times 1} = \frac{210}{6} = 35 \text{ 通り}$
答え: 35通り
問題2:図形作り
円周上に異なる5つの点 A, B, C, D, E があります。
- これらの点のうち、2点を選んで作ることができる線分は何本ありますか?
- これらの点のうち、3点を選んで作ることができる三角形は何個ありますか?
考え方:
- 線分を作るには、5つの点から2つの点を選べばいいね。選ぶ点の順番は関係ない(線分ABと線分BAは同じ)。だから組み合わせだ。
$_5 C_2 = \frac{5 \times 4}{2 \times 1} = 10 \text{ 本}$
- 三角形を作るには、5つの点から3つの点を選べばいいね。選ぶ点の順番は関係ない(三角形ABCと三角形BCAは同じ)。これも組み合わせ。
$_5 C_3 = \frac{5 \times 4 \times 3}{3 \times 2 \times 1} = 10 \text{ 個}$
ちなみに、$_5 C_3 = {}_5 C_{5-3} = {}_5 C_2$ だから、計算するまでもなく10個だとわかるね!
答え: 1. 10本, 2. 10個
組み合わせの考え方、少しつかめてきたかな?「選ぶだけ!」という感覚を大切にしてね。
もっと組み合わせを体験してみたい?実際に選ぶ操作を試せるアプリもあるよ!
→ 組み合わせトレーニングアプリへ進むこのページで出てきたEnglish wordsとその仲間たち
英単語 (English) | 意味 (Meaning) | 例文 (Example Sentence) | 例文の読み上げ | 例文の日本語訳 |
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Combination | 組み合わせ | A combination is a selection of items where order does not matter. | ▶ 再生 | 組み合わせとは、順序が問題にならないアイテムの選択です。 |
Select | 選ぶ | We need to select a committee of three people. | ▶ 再生 | 私たちは3人の委員会を選ぶ必要があります。 |
Group | グループ、組 | Form a group of four students for the project. | ▶ 再生 | プロジェクトのために4人の生徒のグループを作ってください。 |
Set | 集合、組 | A set is a collection of distinct objects. | ▶ 再生 | 集合とは、異なるオブジェクトの集まりです。 |
Order doesn't matter | 順序は関係ない | In combinations, the order doesn't matter. | ▶ 再生 | 組み合わせでは、順序は関係ありません。 |
Choose | 選ぶ | You can choose any three toppings for your pizza. | ▶ 再生 | ピザのトッピングをどれでも3つ選べます。 |