古文対策問題 009(方丈記「ゆく河の流れ」)

【本文】

ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。
淀みに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。
世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。

【現代語訳】

流れてゆく川の水は絶えることがなく、しかし同じ水ではない。
淀みに浮かぶ泡は、すぐに消えたりまたできたりして、長くそのまま残ることはない。
この世に生きる人やその住まいもまた、これと同じである。

【覚えておきたい知識】

文学史・古文常識:

  • 作者:鴨長明(かものちょうめい)。平安末~鎌倉初期の歌人・随筆家。
  • 作品:『方丈記』は鎌倉時代の随筆。無常観と隠遁生活をテーマとする。
  • 無常観:この世のすべては絶えず移り変わるものであり、永遠に変わらぬものはないという考え。

重要古語・語句:

  • 絶えずして:絶えることなく。
  • もとの水にあらず:もはや同じ水ではない。
  • うたかた:水面に浮かぶ泡。
  • かつ消え、かつ結びて:消えたり、またできたりして。
  • ためしなし:例がない、というより「一度もない」意。
  • すみか:住まい、家。

【設問】

【問1】「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」という表現が象徴しているものとして最も適切なものを一つ選べ。

  1. 川は汚れやすいという自然の現象。
  2. 水は再利用できる資源であるということ。
  3. すべてのものは絶えず移り変わり、同じものは存在しないという無常観。
  4. 人は川辺で生活することが多いという事実。
  5. 人は思い出を大切にすべきであるという教え。
【問1 正解と解説】

正解:3

川の流れや泡の消長を人生や世の中にたとえ、常に変化し続ける「無常観」を象徴的に表現している。

【問2】「うたかた」の意味として最も適切なものを一つ選べ。

  1. 小さな魚
  2. 水面に浮かぶ泡
  3. 砂利
  4. 川辺の草花
  5. 小舟
【問2 正解と解説】

正解:2

「うたかた」は「水面に浮かぶ泡」を指す古語。消えては生まれるはかなさを象徴している。

【問3】「世の中にある人とすみかと、またかくのごとし」とあるが、この結びの意味として最もふさわしいものを一つ選べ。

  1. 人や住まいも同じように変わる、という人生の無常。
  2. 人も住まいも決して変わらない。
  3. 川の水と泡は全く関係がない。
  4. 人の一生は川より長い。
  5. 住まいは泡のように美しい。
【問3 正解と解説】

正解:1

川や泡の変化のように、人や住まいもまた常に移り変わる、という無常観が本文の主題である。

レベル:標準|更新:2025-07-25|問題番号:009