古文対策問題 008(奥の細道「草の戸も住み替はる代ぞひなの家」)

【本文】

草の戸も住み替はる代ぞひなの家
春もやうやう暮れ、夏草の生ひ茂るころ、松尾芭蕉は、旅立ちにあたり、かつて自ら住んでいた草庵の跡に立ち寄り、一句を詠んだ。
いまは新たに子供のいる家族が住み、草の戸も賑やかな「ひなの家(雛祭りを祝うような家)」へと変わったのだと感慨深く詠み上げている。

【現代語訳】

草で葺いた粗末な家も、住む人が変わって、今では(ひな祭りのように)子供のいる賑やかな家庭となった。
芭蕉は旅立ちの際、昔住んでいた家を訪ね、時代の移り変わりと新しい住人への温かな思いを一句に託したのである。

【覚えておきたい知識】

文学史・古文常識:

  • 作者:松尾芭蕉(まつお ばしょう)。江戸時代前期の俳人。紀行文「奥の細道」で有名。
  • 作品:『奥の細道』は芭蕉が弟子の曽良を伴い旅した紀行文学。多くの名句・俳句を残す。
  • ひなの家:「ひな」は「雛人形」にかけ、子供のいる家庭・新しい生命の象徴として詠まれている。
  • 草の戸:草で葺いた家、粗末な家。

重要古語・語句:

  • 住み替はる:住む人が変わる。
  • ひなの家:雛人形を祝う家、子供のいる賑やかな家庭。
  • 感慨深く:しみじみと思いにふけるさま。

【設問】

【問1】芭蕉が「草の戸も住み替はる代ぞひなの家」と詠んだ心情として最もふさわしいものを一つ選べ。

  1. 自分が家を失った悲しみ。
  2. 新しい家族の幸福を温かく見守る気持ち。
  3. 旅立ちへの不安と迷い。
  4. 昔の住まいへの未練。
  5. 世の中の無常を嘆く思い。
【問1 正解と解説】

正解:2

住み慣れた家が、今は新しい家族の賑やかな家庭(「ひなの家」)になっている様子を温かく見守り、移ろいゆく世の中への優しいまなざしを表現している。

【問2】「草の戸」の意味として最も適切なものを一つ選べ。

  1. 草むらの中の道
  2. 草で葺いた家・粗末な家
  3. 新しく建てた豪華な家
  4. 子供の遊び場
  5. 旅の途中の仮の宿
【問2 正解と解説】

正解:2

「草の戸」とは、草で屋根を葺いた粗末な家のことである。ここでは芭蕉がかつて住んでいた庵を指している。

【問3】この句が詠まれた状況として正しいものを一つ選べ。

  1. 芭蕉が子供の誕生を祝うために詠んだ。
  2. 旅立ちのとき、自分の旧居に新しい家族が住んでいるのを見て詠んだ。
  3. 江戸で豪華な屋敷を持ったときに詠んだ。
  4. 草の戸で暮らしていた頃の思い出を懐かしんで詠んだ。
  5. 春の花見の席で詠まれた。
【問3 正解と解説】

正解:2

芭蕉は「奥の細道」の旅立ちにあたり、かつての住まいが今は新しい家族の住まいになっているのを見て、人生の移ろいと新しい命への願いを込めてこの句を詠んだ。

レベル:標準|更新:2025-07-25|問題番号:008