古文対策問題 049(更級日記「物語にあこがれて」)
【本文】
物語の多くあらむ世に生まれあひたる心地して、いと嬉し。いとど物語を読みたき心のみまされば、家の人の寝たる夜、灯火の下にて、ひそかに書をひらき見る。
その後も、物語のことぞ忘れがたく、おのずから涙もこぼるるばかりなり。
【現代語訳】
たくさんの物語がある時代に生まれ合わせた気がして、とても嬉しい。ますます物語を読みたい気持ちが高まり、家の人が寝静まった夜に、灯りの下でひそかに本を開いて読む。
その後も物語のことが忘れがたく、自然に涙がこぼれるほどであった。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)。平安時代中期の女流日記文学作家。
- 作品:『更級日記』。少女時代の読書欲と物語への憧れを率直に綴る。
- 物語:平安期に流行した長編散文物語(例:源氏物語など)。
重要古語・語句:
- 生まれあひたる:生まれ合わせた、同時代に生まれた。
- いとど:ますます。
- まされば:高まるので。
- ひそかに:こっそりと。
- おのずから:自然と。
- 涙もこぼるるばかり:涙がこぼれるほど。
【設問】
【問1】筆者が「物語の多くあらむ世に生まれあひたる心地して、いと嬉し」と感じる理由として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 物語をたくさん読めることが嬉しいから
- 物語を書きたかったから
- 家の人が物語を好きだったから
- 旅が好きだったから
- 昔話が得意だったから
【問1 正解と解説】
正解:1
「物語を読みたき心のみまされば」とあり、多くの物語を読むことへの喜びが中心である。
【問2】筆者が夜に「ひそかに書をひらき見る」理由として最も適切なものを一つ選べ。
- 家の人が寝静まってから、こっそり物語を読みたかったから
- 朝早く起きたかったから
- 家族と一緒に読みたかったから
- 外で読もうとしたから
- 寝るのが好きだったから
【問2 正解と解説】
正解:1
「家の人の寝たる夜、灯火の下にて、ひそかに」と、夜にこっそり読む理由が書かれている。
【問3】この段落の『更級日記』の特徴として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 少女時代の読書欲や物語への憧れを率直に綴っている
- 政治の出来事を中心に描いている
- 戦いの記録を記している
- 家族の団らんを描いている
- 農村の生活を記している
【問3 正解と解説】
正解:1
物語への思いと読書への強い憧れ・感動を素直に表現しているのが特徴である。