古文対策問題 050(竹取物語「かぐや姫の昇天」)
【本文】
かぐや姫、月の使ひ来たりて、迎へにまかりけり。翁、嫗(おうな)、涙を流し、別れを惜しみけり。かぐや姫、「いと悲し」とのたまひて、衣を脱ぎて置き、文(ふみ)を残して、天の羽衣をまとひ、月に帰り給ひぬ。
かくて、翁、嫗の家は、もとのごとく寂しきさまになりにけり。
【現代語訳】
かぐや姫のもとに月の使いがやって来て、迎えに来た。翁と嫗は涙を流して別れを惜しんだ。かぐや姫は「とても悲しい」とおっしゃって、衣を脱いで置き、手紙を残し、天の羽衣を身にまとって月に帰っていった。
こうして、翁と嫗の家は、以前のように寂しい様子になった。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:未詳。平安時代初期の物語。
- 作品:『竹取物語』。日本最古の物語文学。「かぐや姫伝説」で有名。
- 天の羽衣:天人がまとうとされる衣。異界への象徴。
重要古語・語句:
- 迎へにまかりけり:迎えにやってきた。
- 翁:おじいさん。
- 嫗:おばあさん。
- 文(ふみ):手紙。
- まとう:身に着ける。
- 寂しきさま:寂しい様子。
【設問】
【問1】かぐや姫が「月に帰り給ひぬ」とは、どのような出来事か、一つ選べ。
- 月の使いに迎えられ、天に帰った
- 都へ旅立った
- 山に隠れ住んだ
- 翁と暮らし続けた
- 国を治めることになった
【問1 正解と解説】
正解:1
「月の使ひ来たりて、迎へにまかりけり」「月に帰り給ひぬ」とあり、天に帰った出来事である。
【問2】かぐや姫が「衣を脱ぎて置き、文を残して」から分かる姫の心情として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 別れを惜しみ、悲しい気持ちで去った
- 急いで逃げた
- 怒りを感じていた
- 新しい生活を楽しみにしていた
- 家に不満があった
【問2 正解と解説】
正解:1
衣や手紙を残したのは、翁と嫗への深い愛情と別れの悲しみを示している。
【問3】『竹取物語』の「かぐや姫の昇天」場面が日本文学で持つ意義としてふさわしいものを一つ選べ。
- 異界との別れと人間の無常を象徴的に描いている
- 戦いの場面が中心である
- 都での政治の記録を記している
- 家族の団らんを描いている
- 農村生活を主題としている
【問3 正解と解説】
正解:1
天と地の別れ、人間の限界や無常、別離の悲しみを象徴的に表現した場面として、後世の文学に強い影響を与えた。