古文対策問題 045(伊勢物語「東下り」)
【本文】
昔、男ありけり。都に住みけるが、ことのついでに、東へ下りける道すがら、いと心細く、やる方なき思ひに沈みける。
三河の国八橋に至りて、からころも きつつなれにし つましあれば はるばる来ぬる 旅をしぞ思ふ、と詠めり。
【現代語訳】
昔、男がいた。都に住んでいたが、あることがきっかけで東国へ下ることになり、旅の途中、とても心細く、どうしようもない思いに沈んでいた。
三河国の八橋に着いて、「からころも 着つつなれにし 妻しあれば はるばる来ぬる 旅をしぞ思ふ」と詠んだ。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:未詳。平安時代の歌物語。
- 作品:『伊勢物語』。在原業平をモデルとする「男」の恋や旅を描く。
- 東下り:都(京都)から東国への旅。
- 八橋:三河国(現・愛知県)にある名所。
重要古語・語句:
- ことのついでに:あることをきっかけに。
- やる方なき:どうしようもない。
- 八橋:地名。かきつばたの名所。
- からころも:衣の枕詞(歌の技巧)。
- なれにし:なじみ深い。
- はるばる:遠く。
【設問】
【問1】「やる方なき思ひに沈みける」とは、どのような気持ちか、一つ選べ。
- 心細くどうしようもない思い
- 喜びと希望に満ちた気持ち
- 怒りの感情
- 友人と語り合う楽しさ
- 新しい土地への期待
【問1 正解と解説】
正解:1
「やる方なき」は「どうしようもない」という意味で、心細さや孤独が強調されている。
【問2】男が八橋で詠んだ歌の内容に込めた気持ちとして最もふさわしいものを一つ選べ。
- 都に残してきた妻を思い、旅の寂しさを詠んだ
- 旅の楽しさを詠んだ
- 八橋の自然の美しさを詠んだ
- 新しい出会いを期待して詠んだ
- 家族の健康を祈って詠んだ
【問2 正解と解説】
正解:1
「妻しあれば はるばる来ぬる 旅をしぞ思ふ」と、都に残した妻を偲ぶ寂しさが詠まれている。
【問3】『伊勢物語』の「東下り」の場面が古典文学で持つ意義としてふさわしいものを一つ選べ。
- 都から遠く離れる不安や望郷の思いを表現している
- 戦いの場面を描いている
- 農民の暮らしを記録している
- 神話の世界を描いている
- 政治の出来事を記している
【問3 正解と解説】
正解:1
「東下り」は都を離れる不安、故郷への思い、寂しさと望郷の情を描き、日本文学で重要なテーマとなっている。