古文対策問題 044(宇治拾遺物語「袴垂、保昌にあふこと」)
【本文】
袴垂は盗人の中にて名高き者なり。ある夜、保昌が家に忍び入らんとす。保昌、これを待ち受けて、やがて捕らへて、「盗人をば、いかがせむ」と問ふ。
袴垂、恐れながらも、「許されば命を助けてたまはれ」と申す。保昌、情けをもよほして、これを許しけり。
【現代語訳】
袴垂は盗人の中でも名高い者であった。ある夜、保昌の家に忍び込もうとした。保昌はそれを待ち受け、すぐに捕まえて「盗人をどうするべきだろうか」と尋ねた。
袴垂は恐れながらも「お許しいただければ、命だけは助けてください」と頼んだ。保昌は情け深さから彼を許したのであった。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:未詳。鎌倉時代の説話集。
- 作品:『宇治拾遺物語』。さまざまな奇譚・説話が収録される。
- 袴垂:伝説的な盗賊。
- 保昌:平安中期の武士、和歌でも名高い人物。
重要古語・語句:
- 忍び入らんとす:忍び込もうとする。
- やがて捕らへて:すぐに捕まえて。
- いかがせむ:どうしようか。
- 命を助けてたまはれ:命をお助けください。
- もよほす:気持ちを起こす、感動する。
【設問】
【問1】保昌が袴垂を許した理由として本文から読み取れるものを一つ選べ。
- 情け深い気持ちが起きたから
- 袴垂が家族だったから
- 盗人を捕まえるのが面倒だったから
- 宝物を奪われたから
- 恐ろしかったから
【問1 正解と解説】
正解:1
「情けをもよほして」とあるように、保昌は情け深い心を起こして許したのである。
【問2】袴垂が「命を助けてたまはれ」と願った心情として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 命だけは助けてほしいと必死に願った
- すぐに逃げ出そうとした
- お金を要求した
- 自分が武士であることを示した
- 家を守ろうとした
【問2 正解と解説】
正解:1
「恐れながらも、命を助けてたまはれ」とは、命だけは救ってほしいという切実な願いである。
【問3】この説話が伝えようとする価値観・教訓として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 情けや寛容さの大切さ
- 盗みの技術の大切さ
- 武士は強くあるべきこと
- お金を大切にすること
- 旅を楽しむこと
【問3 正解と解説】
正解:1
保昌が盗賊を許したことから、「情けや寛容さ」の重要さを説話は伝えている。