古文対策問題 040(蜻蛉日記「秋の夜のつれづれ」)
【本文】
秋の夜、ひとり臥して、なほいとつれづれに思ひつつ、遠き昔のことなど、あはれに思ひ出でらる。虫の音の聞こゆるも、涙の落つるも、いとどやる方なくおぼゆ。
かくて夜更けぬれば、いとど寂しきに、明け方の空さへ物悲しう見ゆるなり。
【現代語訳】
秋の夜、一人で寝ながら、ひどくもの思いにふけって、遠い昔のことなどがしみじみと思い出される。虫の声が聞こえたり、涙が流れたりするのも、いっそうどうしようもない気持ちになる。
こうして夜が更けていくと、ますます寂しさがつのり、明け方の空さえも物悲しく見えるのであった。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:藤原道綱母。平安時代中期の女流日記文学作家。
- 作品:『蜻蛉日記』。夫との不和や孤独、心の葛藤を率直に綴る。
- つれづれ:することもなく退屈なこと、もの思い。
重要古語・語句:
- なほいとつれづれに:やはりとても退屈で。
- あはれに:しみじみと。
- 思ひ出でらる:思い出される。
- やる方なく:どうしようもなく。
- 夜更けぬれば:夜が更けてくると。
- 物悲しう:物寂しく。
【設問】
【問1】秋の夜、筆者が「なほいとつれづれに思ひつつ」感じていることとして最もふさわしいものを一つ選べ。
- 昔のことをしみじみと思い出し、もの寂しく感じている
- 家族と楽しく過ごしている
- 虫をつかまえている
- 夜空を眺めて喜んでいる
- 旅の計画を立てている
【問1 正解と解説】
正解:1
「遠き昔のことなど、あはれに思ひ出でらる」とあるように、もの思いと寂しさが中心である。
【問2】「虫の音の聞こゆるも、涙の落つるも…」の記述が表現している心情として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 寂しさや切なさがいっそう強まる気持ち
- 楽しくて笑いが止まらない気持ち
- 希望にあふれた気持ち
- 怒りがこみあげる気持ち
- 勇気が湧いてくる気持ち
【問2 正解と解説】
正解:1
虫の声や涙も、寂しさややるせなさをいっそう募らせる要素として描かれている。
【問3】「明け方の空さへ物悲しう見ゆるなり」とあるが、この表現が示す情景として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 明け方の空まで物寂しく見えてしまうほど心が沈んでいる
- 明け方の空に喜びを感じている
- 夜明けとともに元気になる
- 朝日がまぶしい
- 外でにぎやかな声が聞こえる
【問3 正解と解説】
正解:1
明け方の空さえも物悲しく見えるほど、寂しさが心を支配している。