古文対策問題 038(更級日記「都への憧れ」)

【本文】

いと恋しくおぼゆるは、都なりけり。東国に住むこと、年ごろになりぬ。心は、いとど都のことのみ思ひいでられて、物語や歌などにも、都のことぞかしこく言ひたる。
夢にだに、京にまうで来たりと見ゆるを、目さめては、いとど悲しくおぼえけり。

【現代語訳】

とても恋しく思われるのは、都であった。東国に住むようになって何年も経った。心はますます都のことばかり思い出され、物語や歌などにも、都のことがすばらしく描かれている。
夢の中でさえ京に参ったと見ると、目が覚めたときにはいっそう悲しく感じられた。

【覚えておきたい知識】

文学史・古文常識:

  • 作者:菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)。平安時代中期の女流日記文学作家。
  • 作品:『更級日記』。都への憧れ、東国での生活の孤独感を綴る。
  • 都:平安京(京都)。

重要古語・語句:

  • いと恋しくおぼゆる:とても恋しく思われる。
  • 年ごろ:何年も。
  • かしこく:立派に、すばらしく。
  • 夢にだに:夢の中でさえ。
  • まうで来たり:参ってきた。
  • いとど:ますます、いっそう。

【設問】

【問1】筆者が「いと恋しくおぼゆるは、都なりけり」と感じている理由として最も適切なものを一つ選べ。

  1. 都の華やかな生活に憧れていたから
  2. 東国の生活が楽しかったから
  3. 家族が都にいたから
  4. 都で歌を詠みたかったから
  5. 都に行ったことがなかったから
【問1 正解と解説】

正解:1

物語や歌にも都の華やかさが描かれ、都への強い憧れが中心となっている。

【問2】「夢にだに、京にまうで来たりと見ゆるを…」から分かる筆者の心情として最もふさわしいものを一つ選べ。

  1. 夢で都に行くが、現実に戻るといっそう悲しくなる
  2. 夢で都に行きたくないと思った
  3. 都での生活が苦しかった
  4. 東国の生活が満足だった
  5. 都のことをすぐに忘れた
【問2 正解と解説】

正解:1

夢の中で都に参るが、目覚めて現実に戻るといっそう悲しみが深まった、と書かれている。

【問3】この段落から読み取れる『更級日記』の特徴として最もふさわしいものを一つ選べ。

  1. 都への憧れと地方生活の孤独感を率直に描いている
  2. 政治の出来事を中心に記している
  3. 戦や争いを主題としている
  4. 家族関係のみを描いている
  5. 歌の作り方を解説している
【問3 正解と解説】

正解:1

都への強い思いと地方での寂しさ・孤独感を素直に綴っているのが特徴である。

レベル:標準|更新:2025-07-25|問題番号:038