古文対策問題 037(徒然草「仁和寺の法師」)
【本文】
仁和寺にある法師、年よるまで石清水を拝まざりければ、心うくおぼえて、あるとき思ひ立ちて、ただ一人、徒歩より参りたり。
楼の上にのぼりて、遙かに本社を拝みて帰りにけり。かの山まで登りて拝みたりければ、ことにありがたくこそおぼえしか。
【現代語訳】
仁和寺の僧が、年をとるまで石清水八幡宮に参拝したことがなかったので、残念に思い、あるとき決心して、一人徒歩で参拝に出かけた。
(しかし)楼の上に登って、遠くから本社を拝んで帰ってきてしまった。山の上まで登って拝んだので、特にありがたく感じたのであった。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:兼好法師(吉田兼好)。鎌倉時代の随筆家。
- 作品:『徒然草』。日常や人生の機微を独特の視点で記す随筆。
- 仁和寺:京都にある寺院。
- 石清水八幡宮:京都・男山にある神社。信仰の対象。
重要古語・語句:
- 年よる:年をとる。
- 心うくおぼえて:残念に思って。
- 思ひ立ちて:決心して。
- 徒歩より:徒歩で。
- 楼:高い建物、楼閣。
- 遙かに:遠くから。
- ありがたくこそおぼえしか:ありがたく感じた。
【設問】
【問1】仁和寺の法師が石清水に「参りたり」とは、どのような行動か、一つ選べ。
- 本社まで行かず、楼の上から遠く拝んで帰ってきた
- 本社で正式な参拝をした
- 友人と一緒に参拝した
- 山道で迷子になった
- 船で参拝した
【問1 正解と解説】
正解:1
法師は「楼の上にのぼりて、遙かに本社を拝みて帰りにけり」と、遠くから拝んで帰ってしまった。
【問2】法師が「ことにありがたくこそおぼえしか」と感じた理由として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 遠くから本社を拝んだだけでも信仰心が満たされたから
- 正式な参拝をしたから
- 珍しいお守りをもらったから
- 友人と再会できたから
- 神主にほめられたから
【問2 正解と解説】
正解:1
本社に行かず、楼の上から遠く拝んだだけでも本人は十分に「ありがたい」と感じたことを表している。
【問3】この話から読み取れる教訓として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 本質を知らずに形だけで満足してはいけない
- 遠くから拝むのが正しい参拝方法である
- 年をとってから信仰するのが良い
- 神社は高い所に建てるべきだ
- 旅は一人でするのが良い
【問3 正解と解説】
正解:1
本社に直接参拝しないまま満足して帰る様子は、「本質を知らずに形だけで満足するな」という教訓となっている。