古文対策問題 036(大鏡「道長の栄華」)
【本文】
この世をば我が世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば、道長の栄華、限りもなし。世の人々、みな恐れ、また羨む心ありけり。
さるほどに、栄耀栄華も久しからず、道長も老いの身となりぬ。世の常なり。
【現代語訳】
この世は自分のものと思う。満月のように、少しも欠けているところがないと思うほど、道長の栄華は果てしない。世の人々はみな道長を恐れるとともに、うらやましくも思った。
しかし、栄華も長くは続かず、道長もやがて年老いた身となった。これも世の常である。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:未詳。平安時代後期の歴史物語。
- 作品:『大鏡』は、藤原氏の繁栄や貴族社会の盛衰を描く歴史物語。
- 藤原道長:摂関政治を極めた貴族。絶頂期の「この世をば…」の和歌が有名。
重要古語・語句:
- 我が世とぞ思ふ:自分のものだと思う。
- 望月:満月。
- 栄華:繁栄、栄え。
- 限りもなし:限りがない。
- さるほどに:そうしているうちに。
- 久しからず:長くは続かない。
- 世の常なり:世の習い・世の定めである。
【設問】
【問1】「この世をば我が世とぞ思ふ望月の…」という道長の和歌が象徴しているものを一つ選べ。
- 自分の栄華が満ち足りているという自負
- 人生の悲しみ
- 自然の美しさ
- 家族への愛情
- 戦いの記録
【問1 正解と解説】
正解:1
道長の絶頂期の和歌で、「自分の世が満ち足りている」という栄華への自信を示している。
【問2】「さるほどに、栄耀栄華も久しからず…」とあるが、この部分が伝えたい人生観として最もふさわしいものを一つ選べ。
- どんな栄華もやがては終わるという無常観
- 努力すれば長生きできるという教え
- 家族と仲良くすることの大切さ
- 友人との別れの悲しみ
- 戦いに勝つことの重要性
【問2 正解と解説】
正解:1
「久しからず、…老いの身となりぬ」と、どんな栄華も長く続かない、無常観が表現されている。
【問3】『大鏡』の本文から読み取れる歴史物語の特徴として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 貴族社会の盛衰や人物の生き様を物語として伝えている
- 自然の美しさだけを描いている
- 恋愛のエピソードばかりを書いている
- 農民の生活だけを記録している
- 和歌の作り方を解説している
【問3 正解と解説】
正解:1
藤原道長の栄華とその終わりなど、貴族社会の盛衰を歴史物語として描いているのが特徴。