古文対策問題 034(枕草子「春はあけぼの」)
【本文】
春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。
夏は夜。月のころはさらなり。闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。雨など降るもをかし。
秋は夕暮れ。夕日のさして、山の端いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへ、あはれなり。
冬はつとめて。雪の降りたるは言ふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでも、いと寒きに、火など急ぎおこして、炭持て渡るも、いとつきづきし。
【現代語訳】
春は夜明けが美しい。次第に白んでいく山の端が少し明るくなり、紫がかった雲が細くたなびいている。
夏は夜がいい。月の美しさはもちろん、暗闇の中で蛍がたくさん飛び交う様子も良い。雨が降る夜もまた趣がある。
秋は夕暮れが美しい。夕日が山の端近くまでさして、カラスがねぐらに帰るために数羽ずつ飛び急ぐ様子まで、しみじみとした情趣がある。
冬は早朝が良い。雪が降った朝は言うまでもなく、霜が真っ白に降りた朝も、さらに寒い中で火を急いで起こして炭を持って歩くのも、季節にぴったりしている。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:清少納言。平安時代中期の女流随筆家。
- 作品:『枕草子』の冒頭。四季の美しさと感性が凝縮されている。
- をかし:趣深い、美しい、面白い、という複数の意味。
重要古語・語句:
- やうやう:しだいに。
- 山ぎは:山の端、山のふもと。
- あかりて:明るくなって。
- 紫だちたる:紫がかった。
- をかし:趣がある、すばらしい。
- つとめて:早朝。
- つきづきし:ふさわしい、ぴったりだ。
【設問】
【問1】「春はあけぼの」において、春の美しさを表す描写として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 山が赤く染まる様子
- 白くなりゆく山際と紫がかった雲がたなびく様子
- 桜が満開の景色
- 夜に蛍が飛ぶ様子
- カラスが飛ぶ様子
【問1 正解と解説】
正解:2
「やうやう白くなりゆく山ぎは、少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる」と、夜明けの景色が美しく描かれている。
【問2】夏の魅力について、筆者が「夜」を選んだ理由として最も適切なものを一つ選べ。
- 蛍や月、雨など夜の情景に趣があるから
- 朝の空気が冷たいから
- 昼の暑さを避けられるから
- 夜に雪が降るから
- 夜は怖いから
【問2 正解と解説】
正解:1
夏の夜は月や蛍、雨などの情景が趣深いとされている。
【問3】「つとめて」「つきづきし」の古語の意味として正しいものを一つ選べ。
- 早朝・ふさわしい
- 昼間・新しい
- 夜・おもしろい
- 冬・さびしい
- 春・美しい
【問3 正解と解説】
正解:1
「つとめて」は早朝、「つきづきし」はふさわしい、ぴったり、の意。