古文対策問題 033(和泉式部日記「消息を絶たれて」)
【本文】
いとど物思ひのまされば、かの人よりも、つひに音もせずなりにけり。夜は更けゆくを、独り臥して思ひあかしつつ、涙もとどまらず流れけり。
かくて日数重なれば、いと心細く、夢にもその人を見ずなりぬ。
【現代語訳】
ますます物思いがつのっていったので、あの方からもついに便りが来なくなってしまった。夜が更けていく中、一人で寝ながら朝まで思い続け、涙も止まらず流れた。
こうして日が重なると、ますます心細くなり、夢にさえもその人を見ることがなくなってしまった。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:和泉式部。平安時代中期の女流歌人・日記文学作家。
- 作品:『和泉式部日記』。恋人との関係の悩みや孤独を赤裸々に綴る。
- 消息:手紙や音信、便り。
重要古語・語句:
- 物思ひ:物思い、悩み。
- まされば:増していくので。
- 音もせずなりにけり:便りもなくなってしまった。
- 思ひあかす:思い悩みながら夜を明かす。
- とどまらず:止まらない。
- 日数重なれば:日々が過ぎていくと。
- いと心細く:とても心細い。
- 見ずなりぬ:見なくなってしまった。
【設問】
【問1】「かの人よりも、つひに音もせずなりにけり」とは、どのような状況を表しているか、一つ選べ。
- 恋人からの便りが来なくなってしまった
- 恋人と毎日会っていた
- 恋人と大声でけんかした
- 恋人の歌が届いた
- 恋人の家に通い詰めた
【問1 正解と解説】
正解:1
「音もせずなりにけり」は「便りが来なくなった」という意味。恋人との音信が途絶えた状況を表す。
【問2】筆者が「涙もとどまらず流れけり」とあるときの心情として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 悲しみと孤独に耐えかねて涙が止まらない
- 喜びで涙があふれる
- 驚いて涙が出る
- 怒りで泣いている
- 眠くて泣いている
【問2 正解と解説】
正解:1
恋人の便りが絶えたことへの深い悲しみと孤独が、涙の止まらない理由である。
【問3】「夢にもその人を見ずなりぬ」とあるが、このことから筆者が感じていることとして最もふさわしいものを一つ選べ。
- ますます孤独感が強まっている
- 夢の内容を忘れてしまった
- 夢で再会する喜びを味わっている
- 現実の生活が忙しくなった
- 夜眠れなくなった
【問3 正解と解説】
正解:1
「夢にさえその人を見ない」ことで、現実でも夢でも孤独が強まり、心細さがいっそう募っている心情が読み取れる。