古文対策問題 031(更級日記「東路の旅」)
【本文】
十三になりて、父の任果てて、上りけるに、東路の道のほど、海づらを行くに、波の音、いとあはれなり。夕されば、波も色濃くなりて、船の上に寝る夜の、心細さも言ふばかりなし。
かくて、つひに都に上り着きにけり。
【現代語訳】
十三歳になって、父の任期が終わり、都に戻ることになった。東国から都へ向かう道のりで、海辺を進むと波の音がとても物悲しく聞こえた。夕方には波も色濃くなり、船の上で寝る夜の心細さは言い表せないほどだった。
こうして、ついに都に到着したのであった。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)。平安時代中期の女流日記文学作家。
- 作品:『更級日記』。少女時代の旅や都への憧れが率直に描かれる。
- 東路:東国から都(京都)へ向かう道。
重要古語・語句:
- 任果てて:任期が終わって。
- 上りける:(都に)上った。
- 海づら:海辺。
- いとあはれなり:とても物悲しい。
- 心細さも言ふばかりなし:とても心細い。
- つひに:ついに、とうとう。
- 上り着きにけり:都に到着した。
【設問】
【問1】「東路の道のほど」で筆者が感じたこととして正しいものを一つ選べ。
- 都への期待と心細さ
- 旅の楽しさ
- 家族との別れ
- 東国の美しさ
- 波の音のうるささ
【問1 正解と解説】
正解:1
都へ向かう旅の中で、「波の音、いとあはれなり」「心細さも言ふばかりなし」とあり、期待と心細さが混じった感情が描かれている。
【問2】「夕されば、波も色濃くなりて…」の表現が示す情景として最も適切なものを一つ選べ。
- 夜が明けて波が静まる
- 夕方になって波の色が濃くなり、物寂しい雰囲気になる
- 朝の波のきらめき
- 大雨で波が高くなる
- 昼間の明るい海辺
【問2 正解と解説】
正解:2
「夕されば、波も色濃くなりて」は、夕方に物寂しい雰囲気が強まる様子を描写している。
【問3】この旅の結末として本文で述べられていることを一つ選べ。
- 都に無事到着した
- 東国にとどまった
- 家族と別れた
- 旅の途中で病気になった
- 船が難破した
【問3 正解と解説】
正解:1
「つひに都に上り着きにけり」とあり、都に到着したことが結末として描かれている。