古文対策問題 030(和泉式部日記「恋の歌の贈答」)
【本文】
かの人の御もとより、恋ひわびて詠みたる歌あり。「暮るる夜のほどの悲しさ知らずして 明けぬる空に思ひみだるる」となむありけるを、涙の落ちぬばかりに眺めて、返事もせずなりにけり。
【現代語訳】
あの方から、恋しさに苦しんで詠んだ歌が届いた。「夜が暮れる間の悲しさも知らないままに、夜が明けてしまった空に、私は思い乱れています」とあった。その歌を涙が落ちるほど見つめて、返事も書かずに過ごしてしまった。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:和泉式部。平安時代中期の女流歌人・日記文学作家。
- 作品:『和泉式部日記』は、恋の悩みや贈答歌、宮廷生活が描かれる。
- 贈答歌:恋愛や交流の中でやり取りされる和歌。
重要古語・語句:
- かの人:あの方、恋人。
- 恋ひわびて:恋い焦がれて悩んで。
- 詠みたる歌:詠んだ歌。
- ほど:間、時。
- 思ひみだるる:思いが乱れる。
- 眺めて:物思いにふける。
- 返事もせずなりにけり:返事をしないままになってしまった。
【設問】
【問1】「恋ひわびて詠みたる歌」の内容として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 朝の喜びを詠んだ歌
- 夜の悲しさと恋の思い乱れを詠んだ歌
- 友との別れを詠んだ歌
- 季節の移ろいを詠んだ歌
- 故郷への思いを詠んだ歌
【問1 正解と解説】
正解:2
「夜の悲しさを知らずして明けぬる空に思ひみだるる」とある通り、夜の悲しさと恋心の乱れを詠んでいる。
【問2】和泉式部が「涙の落ちぬばかりに眺めて、返事もせずなりにけり」とした気持ちとして最も適切なものを一つ選べ。
- 感動し、涙を流しつつ、返事が書けないほど心が揺れ動いた。
- うれしくてすぐ返事を書いた。
- 怒って返事をしなかった。
- 返事を書くのを忘れた。
- 相手に会うのが怖かった。
【問2 正解と解説】
正解:1
「涙の落ちぬばかりに眺めて、返事もせず」とは、感動や心の乱れから返事が書けない状態を示している。
【問3】『和泉式部日記』の特徴として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 恋愛感情や和歌のやりとりが率直に描かれている。
- 政治的事件を中心に記す。
- 戦争の記録である。
- 農業の技術が書かれている。
- 家族の生活のみが書かれている。
【問3 正解と解説】
正解:1
『和泉式部日記』は恋愛の機微や歌の贈答、宮廷での感情の揺れを率直に記した日記文学である。