古文対策問題 028(蜻蛉日記「道綱の母の手紙」)
【本文】
かくありしほどに、ある人のもとより文あり。見れば、道綱の母の手なり。いと心苦しげに書きて、「いかにして今宵も過ぐさむ」とのみあり。返事を書かずなりにけり。
【現代語訳】
こうしているうちに、ある人から手紙が届いた。見ると、それは道綱の母の筆跡であった。とてもつらそうな様子で、「どうして今夜も過ごしたらよいのでしょう」とだけ書いてある。返事を書かなくなってしまった。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:藤原道綱母。平安時代中期の女流日記文学作家。
- 作品:『蜻蛉日記』は女性の苦悩や恋愛、結婚生活の孤独が率直に綴られた日記文学。
- 文:手紙。
重要古語・語句:
- ほどに:間に、うちに。
- もとより:〜から。
- 手なり:筆跡、字。
- 心苦しげに:つらそうに、気がかりそうに。
- 過ぐさむ:過ごそうか。
- 返事を書かずなりにけり:返事を書かなくなってしまった。
【設問】
【問1】「道綱の母の手なり」とあるが、ここでの「手なり」の意味として最も適切なものを一つ選べ。
- 母の手紙の中身
- 母の筆跡・字
- 母の気持ち
- 母の贈り物
- 母の指輪
【問1 正解と解説】
正解:2
「手なり」は「筆跡・字」という意味で、道綱の母の自筆であることを指している。
【問2】道綱の母が手紙に「いかにして今宵も過ぐさむ」と書いた心情として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 楽しい気持ち
- 退屈な気持ち
- つらくて寂しい気持ち
- 驚いた気持ち
- 怒った気持ち
【問2 正解と解説】
正解:3
「心苦しげに書きて」「いかにして今宵も過ぐさむ」は、つらくて寂しい気持ちの表現である。
【問3】「返事を書かずなりにけり」とあるが、これはどのような状況か、一つ選べ。
- 返事を書いたが届かなかった。
- 返事を書かずにしまいになった。
- すぐ返事を送った。
- 誰かが返事を書いてくれた。
- 返事の内容を忘れた。
【問3 正解と解説】
正解:2
「返事を書かずなりにけり」は「返事を書かなくなってしまった」という意味である。