古文対策問題 026(源氏物語「夕顔の巻」)
【本文】
源氏の君、ある日、東の院にまかで給ふ途中、夕顔の咲きたる垣根のもとにて、ひとりの女に出会ひ給ふ。その女、なほ人知れず奥ゆかしき心ばへありて、源氏の君、興を覚え、しばしば逢ふこととなる。
しかし、女はやがて物の怪に取り憑かれ、儚くも命を失ひぬ。源氏の君、深く悲しまれけり。
【現代語訳】
源氏の君はある日、東の院へ退出する途中、夕顔の花が咲く垣根のそばで一人の女性に出会った。その女性は人知れず奥ゆかしい心遣いがあり、源氏の君はその魅力に惹かれて、たびたび会うようになった。
しかし女性はやがて物の怪に取り憑かれ、儚く命を落としてしまった。源氏の君は深く悲しんだ。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:紫式部。平安時代中期の女流作家。
- 作品:『源氏物語』の一巻「夕顔」。儚い恋と死別の哀しみを描く。
- 夕顔:夕方に咲く白い花。美人・はかなさの象徴。
- 物の怪:正体不明の霊的存在。病や死の原因と考えられた。
重要古語・語句:
- まかで給ふ:退出なさる、出かける。
- なほ:やはり、いっそう。
- 奥ゆかしき:奥ゆかしい、奥深く魅力的な。
- 興を覚え:面白み・興味を感じる。
- しばしば:たびたび。
- 儚くも命を失ふ:はかなく命を落とす。
【設問】
【問1】源氏の君が夕顔の女に惹かれた理由として最も適切なものを一つ選べ。
- 家柄が高かったから。
- 奥ゆかしく、人知れぬ魅力があったから。
- 歌が上手だったから。
- 源氏の幼なじみだったから。
- 夕顔の花が好きだったから。
【問1 正解と解説】
正解:2
「なほ人知れず奥ゆかしき心ばへありて、源氏の君、興を覚え」とあり、奥ゆかしい性格と人知れぬ魅力に惹かれた。
【問2】女が「儚くも命を失ひぬ」とあるが、その原因として物語中で語られているものを一つ選べ。
- 旅先で病気になったから。
- 物の怪に取り憑かれたから。
- 源氏に裏切られたから。
- 家族との不和があったから。
- 戦で命を落としたから。
【問2 正解と解説】
正解:2
「女はやがて物の怪に取り憑かれ、儚くも命を失ひぬ」とあり、物の怪(霊的存在)が死の原因と語られている。
【問3】「夕顔の巻」のエピソードから読み取れる平安時代の価値観として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 死や不幸の原因を物の怪などの霊的存在に求めた。
- 恋愛は必ず幸福になると信じられていた。
- 女性は自立して生きるべきだとされた。
- 身分の低い者は恋愛できなかった。
- 恋愛に失敗すると都を追放された。
【問3 正解と解説】
正解:1
病や死の原因を「物の怪」に求めるのは平安時代の特徴的な価値観である。