古文対策問題 025(方丈記「世の中の無常」)
【本文】
ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。
世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。玉の緒よ、絶えなば絶えね、ながらへば、忍ぶることのよわりもぞする。
【現代語訳】
流れる川の水は絶えず流れているが、同じ水ではない。よどみに浮かぶ泡は消えたりできたりして、長くとどまることはない。
この世に生きる人や住まいもまた同じである。命が絶えるなら絶えてしまえばいい、長らえると耐え忍ぶことさえも難しくなってしまうのだから。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:鴨長明(かものちょうめい)。鎌倉時代の随筆家・歌人。
- 作品:『方丈記』は、無常観と隠遁生活を主題とした随筆。平安末~鎌倉初期。
- 玉の緒:命のたとえ。玉を貫く緒(ひも)。
重要古語・語句:
- ゆく河の流れは絶えずして:川の流れは絶えない。
- もとの水にあらず:もはや同じ水ではない。
- うたかた:水面に浮かぶ泡。
- 玉の緒:命のこと。
- ながらへば:長く生きながらえれば。
- しのぶる:こらえる、耐える。
- よわりもぞする:弱ってしまうかもしれない。
【設問】
【問1】本文が伝えたい主題として最も適切なものを一つ選べ。
- 川の流れの美しさを称えている。
- この世のすべては移り変わり、無常であるという人生観。
- 命の大切さを教えている。
- 泡が生まれる不思議を語っている。
- 長生きのコツを教えている。
【問1 正解と解説】
正解:2
川や泡を人生や世の中の無常のたとえとし、すべてが移り変わるものだという無常観を主題にしている。
【問2】「玉の緒よ、絶えなば絶えね…」の「玉の緒」の意味として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 川の中の石
- 命
- 川辺の花
- 家族の絆
- 昔の恋人
【問2 正解と解説】
正解:2
「玉の緒」は「命」のたとえ。命が尽きてもしかたがない、という心情である。
【問3】「ながらへば、忍ぶることのよわりもぞする」とあるが、ここで筆者が危惧していることは何か、一つ選べ。
- 長く生きると忍耐力も弱くなってしまうかもしれないこと。
- 長く生きるとお金がなくなること。
- 長く生きると友人が増えること。
- 長く生きると川が氾濫すること。
- 長く生きると泡が増えること。
【問3 正解と解説】
正解:1
「忍ぶることのよわりもぞする」とは、長く生きると耐え忍ぶ心さえ弱ってしまうかもしれない、という危惧を表している。