古文対策問題 022(更級日記「物語の読書」)
【本文】
かの源氏の物語、一の巻よりして、いとど心もとなし。いかでこのものの、はやく見ばやと思ふ心、ついにやまず。
つれづれなる日、まくらのもとにおきて、いとあやしきまで目もとどめつつ見れば、夢のうちにも、この物語のことをのみ思ひつづく。
【現代語訳】
あの源氏物語を、一巻の最初からずっと、読んでいてもまだ物足りなく思う。なんとかして早く全部読みたいという思いが、消えることはなかった。
暇な日には枕元に置いて、あきれるほどじっと物語に目を通していると、夢の中でもその物語のことばかり思い続けていた。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)。平安時代中期の女流日記文学作家。
- 作品:『更級日記』は少女時代からの物語への憧れや読書体験、成長を記す。
- 源氏物語:紫式部作の長編物語。平安時代を代表する文学。
重要古語・語句:
- いとど心もとなし:いっそう物足りない。
- いかで~ばや:なんとかして~したい。
- つれづれなる日:暇な日。
- あやしきまで:あきれるほど。
- 目もとどめつつ:じっと見つめながら。
【設問】
【問1】作者が「いかでこのものの、はやく見ばや」と思った理由として最も適切なものを一つ選べ。
- 物語の作者に会いたかったから。
- 源氏物語を早く全部読んでみたいと思ったから。
- 友人に自慢したかったから。
- 学校の宿題だったから。
- 枕元に物語がなかったから。
【問1 正解と解説】
正解:2
「いかでこのものの、はやく見ばやと思ふ心」とは、「なんとかして早く源氏物語を全部読みたい」という強い読書欲を示している。
【問2】「つれづれなる日、まくらのもとにおきて…」からわかる作者の様子として正しいものを一つ選べ。
- 物語を遠ざけていた。
- 暇な日に枕元に置いて夢中で読んでいた。
- 物語に飽きてしまった。
- 勉強に専念していた。
- 誰かと語り合っていた。
【問2 正解と解説】
正解:2
作者は「まくらのもとにおきて」「あやしきまで目もとどめつつ見れば」と、暇な日は物語に夢中になっていたことがわかる。
【問3】「夢のうちにも、この物語のことをのみ思ひつづく」とは、どのような心情を表しているか、一つ選べ。
- 物語のことが好きすぎて、夢にまで出てくるほど没頭していた。
- 物語を読むのがつらかった。
- 物語を嫌いになった。
- 現実に満足していた。
- 家族と喧嘩していた。
【問3 正解と解説】
正解:1
「夢の中でも物語のことばかり思い続けた」というのは、それほど物語に心を奪われていたという心情を表している。