古文対策問題 021(枕草子「にくきもの」)
【本文】
にくきもの。昼ほゆる犬。春の網代(あじろ)を引くに、鳥のかかりたる。物言ふに、言ひたることも返事せぬ。など、心にくきもの多かり。
人に物問はれて、知らぬことを「さも」と言ふも、にくし。
【現代語訳】
にくいもの。昼間に吠える犬。春に網代を引くとき、鳥がかかっていること。話しかけても返事をしないこと。こうした心にくいものは多い。
人に尋ねられて、知らないのに知ったふりをして「そうだ」と言うのも、にくいことである。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:清少納言。平安時代中期の女流随筆家。
- 作品:『枕草子』は身の回りの出来事・人物・自然への鋭い観察と感性が特徴。
- 網代(あじろ):冬〜春に川や池で魚・鳥を捕るための仕掛け。
重要古語・語句:
- にくきもの:しゃくに障るもの、いまいましいもの。
- ほゆる:吠える。
- 物言ふ:話しかける、ものを言う。
- 返事せぬ:返事をしない。
- さも:そうだ、そのとおりだ。
【設問】
【問1】清少納言が「にくきもの」として挙げていることとして正しいものを一つ選べ。
- 夜中に犬が吠えること
- 話しかけても返事をしないこと
- 春に花が咲くこと
- 知らないのに黙っていること
- 魚が捕れないこと
【問1 正解と解説】
正解:2
「物言ふに、言ひたることも返事せぬ。」(話しかけても返事をしないこと)が「にくきもの」の一例として挙げられている。
【問2】本文で清少納言が「にくし」と感じた「人に物問はれて、知らぬことを『さも』と言ふ」とはどういうことか、最も適切なものを一つ選べ。
- 知らないのに知ったふりをすること
- 知っていることを言わないこと
- 相手の話をさえぎること
- 大声で返事をすること
- 黙ってうなずくこと
【問2 正解と解説】
正解:1
「知らぬことを『さも』と言ふ」=「知らないのに知ったふりをして、そうだと答えること」である。
【問3】清少納言の「にくきもの」リストの特徴として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 自然や動物、人間のしぐさなど、身近なことに対する鋭い観察がある。
- 季節の美しさのみを賛美している。
- 政治的な批判ばかりを書いている。
- 恋愛についてのみ記述している。
- 古典文学の引用が中心である。
【問3 正解と解説】
正解:1
「にくきもの」には犬や鳥、返事しない人など、身近なことへの独自の観察と感性が反映されている。