古文対策問題 020(堤中納言物語「虫めづる姫君」)
【本文】
ある姫君、世にも珍しきことに、蝶や蛍、毛虫などの虫をこの上なく愛で給ひ、侍女たちの嫌がるをものともせず、手に取りては「いとおもしろし」と眺め給ふ。
姫君は装いも髪も世の常の姫とは異なり、飾り立てることなく、自然のままを好まれけり。その姿を周囲の人々は不思議に思い、時には笑い、時には感心したという。
【現代語訳】
ある姫君が、世にも珍しく、蝶や蛍、毛虫などの虫をとても愛しておられた。侍女たちが嫌がっても気にせず、虫を手に取っては「とても面白い」と眺めていた。
姫君は服装や髪型も、普通の姫君とは違い、華美に飾ることなく、自然な姿を好まれた。その姿を周囲の人は不思議に思い、時には笑い、時には感心したという。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:未詳。平安時代後期の短編物語集『堤中納言物語』の一篇。
- 作品:『堤中納言物語』は貴族社会のユニークな人々や出来事を描く短編物語集。
- 虫めづる姫君:動物や虫に興味を持つ姫君の独自性が描かれる。
重要古語・語句:
- 愛で給ふ:愛でられる、ほめる、かわいがる。
- この上なく:これ以上ないほど。
- おもしろし:趣深い、面白い。
- ものともせず:まったく気にしないで。
- 異なり:違っている。
- 感心:感心する、立派だと思う。
【設問】
【問1】姫君が虫を愛でる姿について、周囲の反応として正しいものを一つ選べ。
- 皆が熱心に真似をした。
- 不思議に思い、時には笑い、時には感心した。
- 姫君を怖れて近寄らなかった。
- 虫を全て駆除した。
- 姫君を城から追放した。
【問1 正解と解説】
正解:2
姫君の行動を「不思議に思い、時には笑い、時には感心した」と本文にもある通り、多様な反応を示した。
【問2】姫君の好みが他の姫君と違っていた点として最も適切なものを一つ選べ。
- 虫が嫌いだった。
- 自然な姿を好み、装いを飾らなかった。
- 豪華な衣装を好んだ。
- 舞を習っていた。
- 髪を短く切っていた。
【問2 正解と解説】
正解:2
姫君は「飾り立てることなく、自然のままを好まれけり」とあり、装い・髪型とも他の姫とは異なり飾らなかった。
【問3】姫君の人物像として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 周囲の目を気にせず、自分の好みに正直に生きる個性的な人。
- 何事にも無関心な人。
- 常に世間の評価ばかりを気にする人。
- 弱い立場の人に厳しい人。
- 特別な能力を持った人。
【問3 正解と解説】
正解:1
姫君は周囲がどう思おうと、自分の好きなこと(虫を愛する、自然な姿を好む)を貫いた個性的な人物である。