古文対策問題 017(平家物語「祇園精舎」)
【本文】
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者も遂には滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。
【現代語訳】
祇園精舎の鐘の音には、すべてのものは移ろい変わるという無常の響きがある。娑羅双樹の花の色は、栄えているものも必ず衰えるという道理を示している。誇り高ぶった人も長くは栄えず、それはまるで春の夜の夢のように儚い。勇ましい者も最後には滅び、すべては風の前の塵のように消えていく。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:未詳(平家一門・僧侶らの口承)。
- 作品:『平家物語』は鎌倉時代の軍記物語。平家の栄華と没落を描き、無常観・仏教思想が主題。
- 祇園精舎:インドの祇園精舎。仏教の聖地。
- 娑羅双樹:インド原産の聖樹。落花が無常の象徴。
重要古語・語句:
- 諸行無常:すべてのものは移り変わる、永遠不変のものはない(仏教の基本思想)。
- 盛者必衰:栄える者も必ず衰える、という理(ことわり・道理)。
- おごれる人:高慢な人、権力を誇る人。
- たけき者:勇ましい者、武人。
- 風の前の塵:風に吹かれて消える塵のように儚いものの例え。
【設問】
【問1】本文の主題として最も適切なものを一つ選べ。
- 鐘の音の美しさを賛美している。
- 勇ましい者が称えられている。
- この世のすべては無常で、盛者も必ず衰えるという教え。
- インドの聖地を紹介している。
- 春の夜の夢は楽しいという話。
【問1 正解と解説】
正解:3
「諸行無常」「盛者必衰」という仏教思想が本文の中心主題であり、栄華も力も儚いことを示している。
【問2】「春の夜の夢のごとし」の意味として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 春の夜は夢をたくさん見るものだ。
- 栄華も権力も、はかなく一瞬で消えることのたとえ。
- 夢の内容は現実になるということ。
- 夜になると桜が咲くということ。
- 春の夜は特に長いということ。
【問2 正解と解説】
正解:2
春の夜の夢のように、権力や栄華も一瞬で儚く消えるという無常観を象徴するたとえである。
【問3】「風の前の塵に同じ」とあるが、その比喩が意味するものとして正しいものを一つ選べ。
- 人の一生は塵のように汚れている。
- 塵が集まれば山となる。
- どんなに強い者も、最期は風に吹かれて消える塵のように儚い存在である。
- 塵を大切にすると幸せになる。
- 風が吹くと人生が変わるという話。
【問3 正解と解説】
正解:3
「風の前の塵」とは、どんなに強い者も最後には儚く消えてしまうという無常観の象徴的比喩である。