古文対策問題 016(源氏物語「若紫」)
【本文】
北山にて、源氏の君、僧都の姪なる少女(わかむらさき)を見初め給ふ。いと幼くて、髪の長きが、花の下に遊びつつ、花を折りて帰りたるさま、いとをかし。
源氏の君、「この児の容貌いとゆゆしきまでめでたし」とて、御心にかけ給ひ、「いとけなきほどより、見習ひ給はば、心やすかるべし」と思し召し、世話を焼き給ふ。
その後、少女は源氏の養女となり、後に紫の上となる。
【現代語訳】
北山で、源氏の君は僧都の姪である少女(若紫)に初めて出会った。まだ幼く、髪が長く、花の下で遊びながら花を折って帰る姿はとても趣深い。
源氏の君は「この子の容貌は驚くほど美しい」と思い、心にかけ、「幼いころから私が見守って育てれば、素直な子になるだろう」と考え、世話を焼いた。
その後、少女は源氏の養女となり、やがて紫の上として物語の重要な登場人物となる。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:紫式部。平安時代中期の女流作家。
- 作品:『源氏物語』は全54帖。若紫(わかむらさき)はのちの「紫の上」。
- 北山:京都北部の地名。物語の舞台の一つ。
- 僧都:高僧の位。
重要古語・語句:
- 見初む:初めて見る、出会う。
- いとけなき:幼い、子供っぽい。
- 容貌:顔立ち、容姿。
- めでたし:素晴らしい、立派だ。
- 御心にかけ給ふ:心に留めなさる、気にかける。
- 思し召す:お思いになる(尊敬語)。
【設問】
【問1】源氏の君が少女(若紫)に特別な関心を寄せた理由として最も適切なものを一つ選べ。
- 僧都の頼みだったから。
- 少女の容姿が非常に美しかったから。
- 少女が泣いていたから。
- 少女が貴族の出身だったから。
- 少女が歌を詠んだから。
【問1 正解と解説】
正解:2
源氏の君は「この児の容貌いとゆゆしきまでめでたし」と容姿の美しさに心を奪われ、世話を焼くようになった。
【問2】「いとけなきほどより、見習ひ給はば、心やすかるべし」とあるが、源氏の君の考えとして正しいものを一つ選べ。
- 幼いころから自分が育てれば、素直でよい子に育つだろう。
- 他人のもとで育った方がよいと考えた。
- 僧都に任せて育てさせるべきだと思った。
- 少女を京から遠ざけようとした。
- 少女に厳しく接しようとした。
【問2 正解と解説】
正解:1
「いとけなきほどより、見習ひ給はば、心やすかるべし」とは、「幼いときから自分が見守って育てれば、素直で穏やかになるだろう」という源氏の考えである。
【問3】若紫(紫の上)は物語の中でどのような存在となるか、一つ選べ。
- 源氏の敵となる。
- 源氏の養女・後の正妻となる重要な人物。
- 物語の冒頭ですぐに亡くなる。
- 源氏の母親となる。
- 源氏の旅の供となる。
【問3 正解と解説】
正解:2
若紫はやがて「紫の上」と呼ばれるようになり、源氏の養女・後の正妻、物語の中心人物の一人となる。