古文対策問題 013(今昔物語集「道心の僧、蛇を助くること」)
【本文】
ある僧、山道を行きけるに、大きなる蛇の、罠にかかりて苦しみ居たり。僧、これを見て哀れと思ひ、罠を解きて助けたりければ、蛇は喜びて山の奥へ去りぬ。
しばらくして、僧の夢にその蛇現れて、「御恩を忘れず、必ず報い申さん」と言ふ。僧はただ夢かと疑ひて、心に留めず。
その後、旅の途中、川を渡らんとしたとき、急流に足をすくわれたが、どこからともなく現れた大蛇が身を横たえて橋となり、僧を向こう岸へ渡らせたという。
【現代語訳】
ある僧が山道を歩いていると、大きな蛇が罠にかかって苦しんでいた。僧はその姿を哀れに思い、罠を外して助けてやると、蛇は喜んで山奥へと去っていった。
しばらくして、僧の夢にその蛇が現れ、「ご恩を忘れず、必ずお返しします」と言った。僧は夢だろうと気にも留めなかった。
その後、旅の途中で川を渡ろうとしたとき、急な流れに足を取られそうになったが、どこからか現れた大蛇が身を橋のようにして僧を向こう岸まで渡らせたという。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:未詳。平安時代末期に成立した説話集『今昔物語集』の一話。
- 作品:『今昔物語集』は仏教説話や奇譚を多く収め、因果応報や恩返しの話が多い。
- 道心:仏道修行の心、仏道に帰依する心。
重要古語・語句:
- 苦しみ居たり:苦しんでいた。
- 哀れ:気の毒に、かわいそうに。
- 申さん:申し上げよう、…してさしあげよう。
- 足をすくわれ:足を取られて。
- 御恩:ご恩、恩義。
【設問】
【問1】僧が蛇を助けた行動の背景として最も適切なものを一つ選べ。
- 蛇に襲われるのを恐れたため。
- 仏教の慈悲心から、苦しむものを助けたいと思ったため。
- 旅の途中で道に迷っていたため。
- 他に助けてくれる人がいたため。
- 罠を壊して遊びたかったため。
【問1 正解と解説】
正解:2
僧が蛇を助けたのは「哀れと思ひ」、仏教の慈悲(苦しむものへの憐れみ)に基づく行動である。
【問2】蛇が夢に現れて言ったこととして最も正しいものを一つ選べ。
- 再び罠にかかったので助けてほしい。
- 今度は僧を助けて恩返しをする、と誓った。
- 僧のことを忘れる、と告げた。
- 山奥でまた会おうと言った。
- ほかの動物にも親切にするように言った。
【問2 正解と解説】
正解:2
蛇は「御恩を忘れず、必ず報い申さん」と恩返しを誓い、後日それを実行している。
【問3】この物語を通して伝えられている主題として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 恩を受けたら必ず返すという因果応報の教え。
- 旅は危険なので気をつけるべきという教訓。
- 夢は現実とは限らないという話。
- 僧は蛇を恐れていたという話。
- 動物を助けると罰を受けるという話。
【問3 正解と解説】
正解:1
本文は「恩を受けたら必ず返す」「善行は良い結果をもたらす」という因果応報の仏教的主題が描かれている。