古文対策問題 011(枕草子「春はあけぼの」)
【本文】
春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。
夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。
秋は夕暮れ。夕日のさして、山の端いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。
冬はつとめて。雪の降りたるは言ふべきにもあらず、霜などのいと白きも、またさらでも、いと寒きに、火など急ぎおこして、炭持てわたるもいとつきづきし。
【現代語訳】
春は明け方が良い。だんだん白んでいく山際が少し明るくなり、紫色の雲が細くたなびいている様子が美しい。
夏は夜が良い。月のある夜はもちろん、暗闇の中に蛍がたくさん飛び交っているのも、また一つ二つだけがほのかに光っていくのも趣深い。
秋は夕暮れ。夕日が差して山の端がとても近く感じられる時、烏が寝床に帰ろうと三羽四羽、二羽三羽と急いで飛んでいく姿も情緒がある。
冬は早朝。雪が降った日は言うまでもなく、霜がとても白く降りているのも、また、寒い朝に火を急いで起こして炭を運ぶのもとても似つかわしい。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:清少納言。平安時代中期の女流随筆家・歌人。
- 作品:『枕草子』は、四季・自然・人々の生活や宮中での出来事を鋭い感覚で描いた随筆。
- 四季の美:春=あけぼの、夏=夜、秋=夕暮れ、冬=つとめて(早朝)の情趣を詠む。
重要古語・語句:
- あけぼの:夜明け、明け方。
- やうやう:しだいに、だんだん。
- たなびく:(雲などが)横に長く続いて漂う。
- をかし:趣深い、風情がある。
- いと:とても。
- つきづきし:ふさわしい、似つかわしい。
- つとめて:早朝、朝早く。
【設問】
【問1】「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは…」の情景として最も適切なものを一つ選べ。
- 春の真夜中、満月が輝く夜の山。
- 春の夕暮れ、太陽が沈む山。
- 春の夜明け、山の端がだんだん明るくなり、紫色の雲が横にたなびく様子。
- 春の昼下がり、桜が満開の山。
- 春の嵐の日、黒い雲が立ち込める山。
【問1 正解と解説】
正解:3
「春はあけぼの」は春の夜明けを賛美し、山際が白み、紫の雲が横に伸びる様子を美しく描写している。答えは3。
【問2】本文で述べられている「つとめて」の意味として最も正しいものを一つ選べ。
- 冬の夜
- 冬の早朝
- 冬の夕暮れ
- 冬の真昼
- 冬の深夜
【問2 正解と解説】
正解:2
「つとめて」は古語で「早朝・朝早く」を表す。冬の清々しい早朝が良いと述べている。
【問3】清少納言が四季それぞれに選んだ情趣として正しい組み合わせを一つ選べ。
- 春=夜明け、夏=夜、秋=夕暮れ、冬=早朝
- 春=昼、夏=朝、秋=夜、冬=夕暮れ
- 春=夕暮れ、夏=夜明け、秋=夜、冬=朝
- 春=夜、夏=昼、秋=夜明け、冬=夕暮れ
- 春=早朝、夏=昼、秋=夜、冬=夜明け
【問3 正解と解説】
正解:1
春=夜明け(あけぼの)、夏=夜、秋=夕暮れ、冬=早朝(つとめて)である。本文でもそれぞれの情趣が詳しく述べられている。