03-01-01: 図解!正しい立ち方・座り方 ~歌声が変わる姿勢のヒミツ~
前のページでは、良い声を出すための土台として「姿勢」と「呼吸」がいかに大切かをお話ししましたね。今回は、そのうちの「姿勢」に焦点を当てて、歌うのに最適な立ち方と座り方を、図(のイメージ)も交えながら具体的に見ていきましょう。
正しい姿勢は、ただ見た目が良いだけでなく、あなたの声の響きや出しやすさに驚くほど大きな影響を与えるんですよ。「たかが姿勢でしょ?」と思わずに、一つ一つのポイントをじっくり確認してみてくださいね。
正しいStanding Posture(スタンディング・ポスチャー:立ち姿勢)
まずは、立って歌うときの正しい姿勢です。カラオケで立って歌う人も多いですよね。この姿勢が基本になります。
立ち姿勢のポイント
- 足元:肩幅くらいに自然に開いて立ちます。体重は両足に均等にかけ、つま先はまっすぐ前か、少しだけ外側に向ける程度にしましょう。膝はピンと張りすぎず、軽くゆるめておくのがkey(キー:鍵、ポイント)です。
- 骨盤と腰:骨盤をまっすぐ立てるイメージです。お尻を後ろに突き出したり(反り腰)、逆にお腹を前に出して腰が丸まったりしないように注意しましょう。壁に背中をつけて立ったとき、腰と壁の間に手のひら一枚分くらいの隙間ができるのが理想です。
- 背筋と胸:頭のてっぺん(つむじのあたり)から一本の糸で、真上にそっと引っ張られているような感覚で、背筋を自然にスッと伸ばします。このとき、胸を無理に張りすぎると力みにつながるので注意。あくまでnatural(ナチュラル:自然)に。
- 肩と腕:肩はリラックスさせて、力を抜き、ストンと自然に下ろします。「耳と肩の距離をできるだけ遠くする」ようなイメージを持つと、肩が上がりにくくなります。腕も力まず、体の横に自然に垂らすか、おへその少し下あたりで軽く組む程度にしましょう。
- 首と頭・視線:あごを軽く引いて、首の骨が背骨の延長線上にまっすぐ乗るように意識します。頭が前に突き出たり、あごが上がって首が反り返ったりしないように。視線はまっすぐ前か、やや遠くを見るようにすると良いでしょう。
立ち姿勢チェックリスト
鏡を見ながら、以下の点を確認してみましょう。
- □ 両足に均等に体重が乗っているか?膝は軽くゆるんでいるか?
- □ 横から見て、耳・肩・腰・膝・くるぶしがほぼ一直線になっているか?
- □ 背中が丸まったり、反りすぎたりしていないか?
- □ 肩に力が入って上がっていないか?
- □ あごが上がったり、前に突き出たりしていないか?
正しいSitting Posture(シッティング・ポスチャー:座り姿勢)
椅子に座って歌う場合も、基本的な考え方は立ち姿勢と同じです。特に、ピアノの弾き語りをする人や、カラオケでじっくり歌いたい人は参考にしてください。
座り姿勢のポイント
- 椅子の座り方:椅子の前半分から2/3くらいに、やや浅めに腰掛けます。深く腰掛けすぎると、骨盤が後ろに倒れやすくなり、背中も丸まりがちです。
- 足元:両足の裏全体がしっかりと床につくようにします。膝の角度は90度くらいが目安です。足は肩幅程度に開き、安定させましょう。もし椅子の高さが合わない場合は、足台などを使って調整すると良いでしょう。
- 骨盤と背筋:ここが最も重要!座ったときも、立ち姿勢と同じように骨盤をしっかりと立てます(坐骨(ざこつ)というお尻の下のほうにある骨で座面を捉えるイメージ)。そして、その上に背骨を一本一本積み重ねるように、背筋を自然にスッと伸ばします。椅子の背もたれには、基本的には寄りかからないようにしましょう。
- 肩・首・頭・腕:立ち姿勢のポイントと全く同じです。肩の力を抜き、首をまっすぐ保ち、あごを軽く引きます。腕もリラックスさせましょう。
座り姿勢チェックリスト
座って歌うときは、以下の点を確認してみましょう。
- □ 椅子の前の方に座り、両足の裏が床についているか?
- □ 骨盤がしっかり立っていて、背筋が伸びているか?(背もたれに寄りかかっていないか?)
- □ 肩や首に余計な力が入っていないか?
姿勢を保つためのちょっとしたコツ
- こまめにストレッチ:長時間同じ姿勢でいると体が固まりがち。肩を回したり、首をゆっくり伸ばしたり、簡単なストレッチで体をほぐしましょう。
- 日常生活から意識する:歌うときだけ良い姿勢をしようとしても難しいものです。普段から、歩くときや座っているときの姿勢を少し意識するだけで、だんだんと体が覚えていきます。
- 壁を使って感覚を掴む:壁にかかと、お尻、肩甲骨、後頭部をつけて立ってみましょう。これが背筋が伸びた状態の目安になります(腰と壁の間は手のひら一枚程度)。この感覚を覚えておくと、壁がなくても再現しやすくなります。
正しい姿勢は、最初は少し窮屈に感じるかもしれませんが、慣れてくるとむしろ楽に声が出せるようになります。リラックスしつつも、体の中に一本の芯が通っているような、しなやかで安定した姿勢を目指しましょう。この良い姿勢が、次のステップである「腹式呼吸」を効果的に行うための土台となるのです。