第3章 条件付き確率 ~ある出来事が起こったという情報の下で~
3-1: 条件付き確率Conditional Probability とは?
さあ、今日からは確率の世界の新しい扉を開けるよ!第2章までは、例えば「サイコロを1回振ったとき、1の目が出る確率は?」のように、特に他の情報がない状態での確率を考えてきたね。
でも、私たちの周りでは、何か情報が加わることで確率が変わる場面がたくさんあるんだ。例えば、「明日の天気は?」と聞かれたときの雨の確率と、「天気予報で『降水確率90%』と発表された」という情報を知った後での雨の確率は、きっと違うはずだよね?
このように、「~~という条件が起こった」という情報が与えられた上で、別の出来事が起こる確率のことを「条件付き確率Conditional Probability」と呼ぶんだ。今回は、この条件付き確率の基本的な考え方を見ていこう!
条件付き確率Conditional Probability の考え方
ある事象Aが起こった、ということがすでに分かっている(または、起こったと仮定する)条件の下で、別の事象Bが起こる確率のことを、「事象Aが起こったという条件のもとでの事象Bの条件付き確率」といい、記号 $\mathbf{P(B|A)}$ で表すよ。
読み方は「ピー・ビー・ギブン・エー (P B given A)」や、「Aが起こったときのBの確率」などと言うことが多いかな。
ポイント:条件付き確率を考えるときは、もともと考えていた「起こりうるすべての場合(標本空間)」が、条件となる事象Aが起こった場合に限定される(絞り込まれる)んだ。その絞り込まれた新しい範囲の中で、事象Bが起こる割合を考える、というイメージだよ。
例題1:サイコロで偶数が出たとき、それが4である確率
1個の公正なサイコロを1回投げたとするよ。
- 事象A:「偶数の目が出た」 $\implies$ 起こりうる場合は {2, 4, 6} の3通り。
- 事象B:「4の目が出た」 $\implies$ 起こりうる場合は {4} の1通り。
ここで求めたいのは、「偶数の目が出た」という条件のもとで、「それが4の目である」確率、つまり $P(B|A)$ だ。
考え方:
まず、「偶数の目が出た」という情報によって、考える範囲(標本空間)が元の {1, 2, 3, 4, 5, 6} から {2, 4, 6} の3通りに限定されるんだ。
その限定された範囲 {2, 4, 6} の中で、「4の目である」場合は何通りあるかな? …そう、{4} の1通りだね。
だから、この条件付き確率は、
$P(\text{4の目} | \text{偶数の目}) = \frac{\text{偶数の中で4の目である場合の数}}{\text{偶数である場合の数}} = \frac{1}{3}$
となるんだ!元の確率 $P(\text{4の目}) = \frac{1}{6}$ とは違う値になるのがわかるかな?
左:元の標本空間 / 右:条件(偶数)で絞られた空間での確率
例題2:非復元抽出で2回目に赤玉が出る確率(1回目が赤だった場合)
袋の中に赤玉3個と白玉2個が入っているとする。玉を1個取り出し、元に戻さずに、続けてもう1個取り出す試行を考えよう。
- 事象A:「1個目に赤玉が出た」
- 事象B:「2個目に赤玉が出た」
ここで求めたいのは、「1個目に赤玉が出た」という条件のもとで、「2個目も赤玉である」確率、つまり $P(B|A)$ だ。
考え方:
「1個目に赤玉が出た」という条件によって、袋の中の状態が変わるよね。元々は赤3白2の計5個だったけど、1個目の赤玉を取り出した(そして戻さない)ので、袋の中は 赤玉2個、白玉2個の合計4個 になっている。
この新しい状態の袋から、2個目の玉を取り出すことを考えるんだ。この状況で赤玉が出る確率は?
袋の中には4個の玉があり、そのうち赤玉は2個だから…
$P(\text{2個目赤} | \text{1個目赤}) = \frac{\text{残りの赤玉の数}}{\text{残りの玉の総数}} = \frac{2}{4} = \frac{1}{2}$
となる。もし1回目に白玉が出ていたら、2回目の赤玉の確率は $\frac{3}{4}$ になっていたはずだから、これは典型的な「従属事象」の例であり、条件によって確率が変わる良い例だね。
1回目赤の後、袋の中身が変化する!
条件付き確率の計算式 (ちらっと紹介)
この条件付き確率 $P(B|A)$ を計算する一般的な公式もあるんだ。これは次のページで詳しく説明するけど、考え方を知っておくと便利だよ。
事象Aと事象Bが同時に起こる確率 $P(A \cap B)$ を、条件となる事象Aが起こる確率 $P(A)$ で割ることで計算できるんだ。(ただし、$P(A)$ は0より大きい必要があるよ。)
$P(B|A) = \frac{P(A \cap B)}{P(A)}$
さっきの例題1で確認してみよう。
- $P(A \cap B)$:事象A「偶数」と事象B「4の目」が同時に起こる確率。これは「4の目が出る」確率と同じだから、$P(A \cap B) = P(\text{4の目}) = \frac{1}{6}$。
- $P(A)$:事象A「偶数」が起こる確率は、$P(A) = P(\text{偶数}) = \frac{3}{6} = \frac{1}{2}$。
- 公式を使うと、$P(B|A) = \frac{P(A \cap B)}{P(A)} = \frac{1/6}{1/2} = \frac{1}{6} \times \frac{2}{1} = \frac{2}{6} = \frac{1}{3}$。
ちゃんと、さっき考えた結果 $\frac{1}{3}$ と一致したね!この公式の便利な使い方や、これを使った乗法定理については、次のページで詳しく見ていこう。
独立事象との関係
もし、事象Aと事象Bが互いに独立だったらどうなるかな?独立というのは、Aが起ころうと起こるまいとBの確率に影響しない、ということだったよね。
だから、もしAとBが独立なら、
$P(B|A) = P(B)$
となるんだ。「Aが起こったという条件」があってもなくても、Bの確率は変わらない、ということだね。
これは条件付き確率の計算式からも確認できるよ。AとBが独立なら $P(A \cap B) = P(A) \times P(B)$ だったから、$P(B|A) = \frac{P(A \cap B)}{P(A)} = \frac{P(A) \times P(B)}{P(A)} = P(B)$ となるね。
このページで出てきたEnglish wordsとその仲間たち
英単語 (English) | 意味 (Meaning) | 例文 (Example Sentence) | 例文の読み上げ | 例文の日本語訳 |
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Conditional Probability | 条件付き確率 | Conditional probability is the likelihood of an event occurring based on the occurrence of a previous event. | ▶ 再生 | 条件付き確率とは、前の事象が発生したことに基づいて、ある事象が発生する可能性のことです。 |
Given that... / Assuming that... | ~という条件の下で / ~と仮定して | What is the probability of B given that A has occurred? | ▶ 再生 | Aが発生したという条件の下で、Bの確率はどれくらいですか? |
P(B|A) | Aが起こった条件でのBの確率 | The notation P(B|A) represents the conditional probability of B given A. | ▶ 再生 | 記号 P(B|A) は、Aを与えられたときのBの条件付き確率を表します。 |
Dependent Events | 従属事象 | Drawing balls from a bag without replacement involves dependent events. | ▶ 再生 | 袋から玉を復元せずに取り出すことは、従属事象を伴います。 |
Reduced Sample Space | 縮小された標本空間 | Conditional probability considers a reduced sample space based on the condition. | ▶ 再生 | 条件付き確率は、条件に基づいて縮小された標本空間を考慮します。 |
Likelihood | 可能性、見込み | The likelihood of rain increases if the sky is cloudy. | ▶ 再生 | 空が曇っていれば、雨の可能性は高まります。 |