ウルトラ先生の確率教室

第2章 確率の計算 ~「起こりやすさ」を数字で表す~

2-2: コイン投げの確率Probability

前のページでは、確率の基本的な考え方 $P(A) = \frac{a}{N}$ と、「同様に確からしいEqually Likely」という大切な前提について学んだね。

今回は、確率を考える上で最もシンプルで分かりやすい例の一つ、「コイン投げ」の確率について見ていこう。使うコインは、もちろん偏りのない「公正なコインFair Coin」を仮定するよ!

1枚のコインを投げる場合

まず、1枚の公正なコインを1回投げる試行trialを考えてみよう。

このとき、それぞれの確率を計算すると…

$P(\text{表}) = \frac{\text{表が出る場合の数}}{\text{起こりうるすべての場合の数}} = \frac{1}{2}$

$P(\text{裏}) = \frac{\text{裏が出る場合の数}}{\text{起こりうるすべての場合の数}} = \frac{1}{2}$

どちらも確率 $\frac{1}{2}$ (つまり 50%) ということになるね。とってもシンプルだ!

複数枚のコインを投げる場合

次に、コインの枚数を増やしてみよう。1枚のコインを複数回投げるのも、複数枚の異なるコインを同時に投げるのも、確率の考え方としては同じように扱えるよ。

2枚のコインを同時に投げる場合

A君とB君がそれぞれ1枚ずつ、合計2枚のコインを同時に投げるとする。(または、1枚のコインを2回投げると考えてもいいね)

起こりうるすべての根元事象を書き出すと、(1枚目, 2枚目) の形で…

  • (表, 表) - H H
  • (表, 裏) - H T
  • (裏, 表) - T H
  • (裏, 裏) - T T

の $2 \times 2 = 4$ 通りがある。これらはすべて同様に確からしいと考えられるね。

2枚のコインを投げたときの全事象
コイン1 コイン2
表 (H)表 (H)
表 (H)裏 (T)
裏 (T)表 (H)
裏 (T)裏 (T)

では、いくつかの事象eventの確率を計算してみよう。

例1:2枚とも表が出る確率

(表, 表) の1通りだけなので…

$P(\text{2枚とも表}) = \frac{1}{4}$

例2:1枚が表で、1枚が裏になる確率

(表, 裏) と (裏, 表) の2通りあるので…

$P(\text{1枚表, 1枚裏}) = \frac{2}{4} = \frac{1}{2}$

例3:少なくとも1枚は表が出る確率

「少なくとも1枚は表」ということは、「2枚とも表」か「1枚が表で1枚が裏」の場合だね。

該当するのは (表, 表), (表, 裏), (裏, 表) の3通り。なので…

$P(\text{少なくとも1枚は表}) = \frac{3}{4}$

(ちなみに、これは「全部裏」という場合の反対(余事象)だから、$1 - P(\text{2枚とも裏}) = 1 - \frac{1}{4} = \frac{3}{4}$ とも計算できるよ。余事象についてはまた後で詳しく学ぼう!)

3枚のコインを同時に投げる場合

今度は3枚のコインを同時に投げてみよう。

起こりうるすべての根元事象は、$2 \times 2 \times 2 = 8$ 通りになるね。書き出してみると…

(Hは表, Tは裏)

  1. HHH (表, 表, 表)
  2. HHT (表, 表, 裏)
  3. HTH (表, 裏, 表)
  4. THH (裏, 表, 表)
  5. HTT (表, 裏, 裏)
  6. THT (裏, 表, 裏)
  7. TTH (裏, 裏, 表)
  8. TTT (裏, 裏, 裏)

これら8通りは、すべて同様に確からしいと考えられる。

例1:3枚とも表が出る確率

HHH の1通りだけなので…

$P(\text{3枚とも表}) = \frac{1}{8}$

例2:表が2枚、裏が1枚出る確率

該当するのは HHT, HTH, THH の3通りだね。なので…

$P(\text{表2枚, 裏1枚}) = \frac{3}{8}$

(これは、3つの場所から裏が出る場所を1つ選ぶ組み合わせ ${}_3C_1 = 3$ 通り、と考えることもできるよ!)

理論上の確率と実際の実験:大数の法則Law of Large Numbers

コインを1枚投げて表が出る確率は $\frac{1}{2}$ だけど、実際に2回コインを投げてみても、必ず1回表、1回裏になるとは限らないよね?もしかしたら2回とも表が出るかもしれないし、2回とも裏が出るかもしれない。

でも、もしコインを投げる回数をものすごーく多くしていくと(例えば、1000回、1万回、100万回…)、不思議なことに、表が出た回数の割合はだんだん $\frac{1}{2}$ に近づいていくんだ。このように、試行の回数を多くすればするほど、実際のデータから得られる確率(統計的確率)が、理論上の確率(数学的確率)に近づいていくことを「大数の法則Law of Large Numbers」というよ。

この法則は、保険の仕組みや、統計調査など、世の中のいろいろな場面で応用されているんだ。

→ コイン投げシミュレーターで大数の法則を体験してみよう!

現実のコインは本当に「同様に確からしい」?

私たちは「公正なコイン」を仮定して確率を計算しているけど、現実世界のコインは、製造時のほんのわずかな歪みや、表と裏のデザインの違いによる重心のズレ、投げ方などによって、厳密には完全に表と裏が $\frac{1}{2}$ の確率で出るとは限らない、という研究もあるんだって。(でも、その差はとっても小さいものだけどね!)

それでも、コイン投げは確率の基本的な考え方を学ぶための、とても分かりやすくて優れたモデルなんだよ。

このページで出てきたEnglish wordsとその仲間たち

英単語 (English) 意味 (Meaning) 例文 (Example Sentence) 例文の読み上げ 例文の日本語訳
Coin 硬貨、コイン He flipped a coin to decide. ▶ 再生 彼は決めるためにコインを投げました。
Toss / Flip 投げる(コインなどを) Let's toss a coin. / Flip the coin. ▶ 再生 コインを投げよう。
Heads (コインの)表 If it's heads, I win. ▶ 再生 もし表なら、私の勝ちです。
Tails (コインの)裏 The coin landed tails up. ▶ 再生 コインは裏向きに落ちました。
Fair Coin 公正なコイン、偏りのないコイン For a fair coin, the probability of heads is 0.5. ▶ 再生 公正なコインの場合、表が出る確率は0.5です。
At least 少なくとも What is the probability of getting at least one head? ▶ 再生 少なくとも1回表が出る確率はどれくらいですか?
Law of Large Numbers 大数の法則 The Law of Large Numbers states that the sample mean converges to the true mean as sample size increases. ▶ 再生 大数の法則は、標本サイズが増加するにつれて標本平均が真の平均に収束することを示しています。