第2章 確率の計算 ~「起こりやすさ」を数字で表す~
2-1: 確率Probability の定義(同様に確からしいEqually Likely とは?)
みんな、第1章では「場合の数」について学んだね。何通りあるかを数えるのは、確率を計算するための大切な準備体操だったんだ。
さて、「明日の降水確率は50%」「宝くじが当たる確率はものすごく低い!」なんて言葉を日常でよく聞くよね。この「確率」というものを、数学ではどうやってはっきりと決めているんだろう?
簡単に言うと、確率Probability とは、ある出来事の「起こりやすさの度合い」を数字で表したものなんだ。そして、その数字を計算するためには、まず「同様に確からしいEqually Likely」という考え方がとっても重要になるよ。
「同様に確からしいEqually Likely」とは?
ある試行trial(サイコロを投げる、コインを投げるなど)をするとき、考えられる個々の結果(これを根元事象elementary eventというよ)が、どれも同じ程度に起こることが期待できる状態のことを「同様に確からしい」と言うんだ。
例えば…
- ゆがみや偏りのないサイコロを1回投げるとき、1, 2, 3, 4, 5, 6 のどの目が出ることも「同様に確からしい」。
- 同じように、偏りのないコインを投げるとき、表が出ることも裏が出ることも「同様に確からしい」。
でも、もしサイコロの特定の面だけ重くなっていたり、コインが曲がっていたりしたら、出る目は偏ってしまうよね?そういう場合は「同様に確からしい」とは言えないんだ。
左:バランスの取れたサイコロ(同様に確からしい)
右:偏ったサイコロ(同様に確からしくない)
この「同様に確からしい」という前提が、これから学ぶ確率の計算の基本になるから、しっかり覚えておこうね!
確率Probability の数学的な定義
ある試行trialにおいて、起こりうるすべての結果が $N$ 通りあり、それらがすべて同様に確からしいとするよ。
このうち、ある特定の事象event A が起こる場合の数が $a$ 通りであるとき、事象Aの起こる確率probability $P(A)$ は、次のように定義されるんだ。
$P(A) = \frac{\text{事象Aが起こる場合の数}}{\text{起こりうるすべての事象の場合の数}} = \frac{a}{N}$
つまり、確率とは「全体の中で、注目するものがどれくらいの割合を占めているか」を表す分数なんだね。
具体的な例で確率を計算してみよう!
例題1:サイコロで3の目が出る確率
ゆがみのないサイコロを1回投げるとき、3の目が出る確率を求めてみよう。
- 起こりうるすべての場合は、$N=6$ 通り (1, 2, 3, 4, 5, 6 の目)。これらは同様に確からしい。
- 3の目が出るという事象Aが起こる場合は、$a=1$ 通り。
$P(\text{3の目}) = \frac{1}{6}$
例題2:サイコロで偶数の目が出る確率
ゆがみのないサイコロを1回投げるとき、偶数の目が出る確率を求めてみよう。
- 起こりうるすべての場合は、$N=6$ 通り。
- 偶数の目が出るという事象A (2, 4, 6の目) が起こる場合は、$a=3$ 通り。
$P(\text{偶数の目}) = \frac{3}{6} = \frac{1}{2}$
例題3:袋から赤玉が出る確率
赤玉3個と白玉2個が入っている袋があります。この袋から玉を1個取り出すとき、赤玉が出る確率を求めてみよう。(どの玉も同じように取り出されるものとする)
- 玉は全部で $3+2=5$ 個。どの玉が取り出されるかも同様に確からしいので、起こりうるすべての場合は $N=5$ 通り。
- 赤玉が出るという事象Aが起こる場合は、$a=3$ 通り。
$P(\text{赤玉}) = \frac{3}{5}$
例題4:トランプでハートのエースを引く確率
ジョーカーを含まない52枚のトランプからよく切って1枚を引くとき、それがハートのエースである確率を求めてみよう。
- 起こりうるすべての場合は、$N=52$ 通り。(どのカードも同様に確からしく引かれる)
- ハートのエースは、52枚の中にたった1枚しかないね。なので、$a=1$ 通り。
$P(\text{ハートのA}) = \frac{1}{52}$
例題5:トランプでキング(K)を引く確率
ジョーカーを含まない52枚のトランプからよく切って1枚を引くとき、それがキング(K)である確率を求めてみよう。
- 起こりうるすべての場合は、$N=52$ 通り。
- キング(K)のカードは、ハート、ダイヤ、クラブ、スペードの4種類あるので、$a=4$ 通り。
$P(\text{キング}) = \frac{4}{52} = \frac{1}{13}$
(約分できるときは、約分して最も簡単な分数で答えるのが普通だよ!)
大切な言葉たち:「試行」「事象」「根元事象」
確率の話をするときによく出てくる言葉を整理しておこう。
- 試行 (Trial / Experiment)
- サイコロを投げる、コインを投げる、くじを引くなど、同じ条件でくり返すことができ、その結果が偶然によって決まるような実験や観測のこと。
- 事象 (Event)
- 試行の結果として起こりうる事柄のこと。例えば、「サイコロを投げて偶数の目が出る」とか「袋から赤玉を取り出す」など。
- 根元事象 (Elementary Event / Sample Point)
- それ以上細かく分けられない、試行の個々の結果のこと。例えば、「サイコロを投げて1の目が出る」「コインを投げて表が出る」など。起こりうるすべての根元事象の集まりを標本空間(Sample Space)と呼ぶこともあるよ。
確率の定義 $P(A) = \frac{a}{N}$ は、より正確に言うと、
$P(A) = \frac{\text{事象Aに含まれる根元事象の数}}{\text{起こりうるすべての根元事象の数}}$
という意味なんだ。そして、この計算ができるのは、すべての根元事象が同様に確からしいときだけ、ということを忘れないでね!
このページで出てきたEnglish wordsとその仲間たち
英単語 (English) | 意味 (Meaning) | 例文 (Example Sentence) | 例文の読み上げ | 例文の日本語訳 |
---|---|---|---|---|
Probability | 確率 | The probability of rolling a 6 on a fair die is 1/6. | ▶ 再生 | 公正なサイコロで6が出る確率は1/6です。 |
Equally Likely | 同様に確からしい | When flipping a fair coin, heads and tails are equally likely outcomes. | ▶ 再生 | 公正なコインを投げる際、表と裏は同様に確からしい結果です。 |
Trial | 試行 | Each coin flip is an independent trial. | ▶ 再生 | 各コイン投げは独立した試行です。 |
Experiment | 実験、試行 | Rolling a die is a simple probability experiment. | ▶ 再生 | サイコロを振ることは簡単な確率の実験です。 |
Event | 事象 | Getting an even number when rolling a die is an event. | ▶ 再生 | サイコロを振って偶数が出ることは事象です。 |
Outcome | 結果 | The possible outcomes of rolling a die are 1, 2, 3, 4, 5, or 6. | ▶ 再生 | サイコロを振ったときのありうる結果は1、2、3、4、5、または6です。 |
Elementary Event | 根元事象 | For a die roll, 'getting a 4' is an elementary event. | ▶ 再生 | サイコロ投げにおいて、「4が出る」ことは根元事象です。 |
Sample Space | 標本空間 | The sample space for a coin toss is {Heads, Tails}. | ▶ 再生 | コイン投げの標本空間は{表、裏}です。 |
Fair (die/coin) | 公正な、偏りのない(サイコロ/コイン) | We assume the die is fair, so each side has an equal chance. | ▶ 再生 | サイコロは公正であると仮定するので、各面が出る確率は等しいです。 |