第1章 場合の数 ~すべての場合を数え上げよう~
1-2: 順列Permutation ~並べる順番が大切~
前のページでは、場合の数を数えるための「和の法則」と「積の法則」を学んだね。特に積の法則は、「Aをして、さらにBをする」というように、連続した操作の場合の数を考えるときに役立ったのを覚えているかな?
今回は、その積の法則と深いつながりがある「順列Permutation」について見ていくよ。順列は、いくつかのものを「順番を区別して一列に並べる」ときに、その並べ方が何通りあるかを考える方法なんだ。
順列Permutation とは?
順列Permutation とは、異なるいくつかのものの中から、一部または全部を選んで、順番に意味を持たせて一列に並べたときの、その並べ方の総数のことだよ。
ポイントは「異なるもの」を「順番を区別して」並べる、という点だ。
例えば、こんな場面で順列の考え方が使われるよ。
- リレーの走る順番を決める(1番走者、2番走者…と順番が重要だね)
- 3つの数字を使って3桁の暗証番号を作る(123と321は違う番号だよね)
- 選ばれた人たちで記念撮影をするとき、誰がどこに並ぶか
例題1:3枚のカードの並べ方
A, B, C と書かれた3枚の異なるカードがあります。この3枚のカードを一列に並べる方法は何通りありますか?
考え方(書き出し):
実際に書き出してみると…
ABC, ACB, BAC, BCA, CAB, CBA
の6通りだね。
考え方(積の法則):
3つの場所(1番目、2番目、3番目)にカードを置いていくと考えてみよう。
- 1番目に置けるカードの選び方:A, B, C の3通り
- 2番目に置けるカードの選び方:1番目に置いたカード以外の残り2通り
- 3番目に置けるカードの選び方:最後に残った1通り
積の法則を使うと…
$3 \times 2 \times 1 = 6$ 通り
答え: 6通り
3つの枠にカードが順番に入っていくイメージだよ。
例題2:5人から3人を選んで並べる
A, B, C, D, E の5人の中から3人を選んで一列に並べるとき、並べ方は何通りありますか?(例えば、リレーの第1走者、第2走者、第3走者を決める場合など)
考え方(積の法則):
3つのポジション(1番目、2番目、3番目)に誰を配置するかを考えるよ。
- 1番目に並ぶ人の選び方:5人の中から選ぶので5通り
- 2番目に並ぶ人の選び方:1番目に選んだ人以外の残り4人から選ぶので4通り
- 3番目に並ぶ人の選び方:1番目と2番目に選んだ人以外の残り3人から選ぶので3通り
積の法則を使うと…
$5 \times 4 \times 3 = 60$ 通り
答え: 60通り
順列の記号 P を使ってみよう
毎回「~通り × ~通り × …」と書くのは少し大変だよね。そこで、順列を表す便利な記号があるんだ。
異なる $\mathbf{n}$ 個のものから 異なる $\mathbf{r}$ 個を選んで一列に並べる順列の場合の数を、次のように書くよ。
$_n P_r \quad \text{または} \quad P(n, r)$
読み方は「エヌ・ピー・アール」や「ピー・エヌ・アール」など様々だよ。「$n$ 個から $r$ 個取るパーミュテーション」と意味を込めて読んでもいいね。
計算方法は、$\mathbf{n}$ から始まって1ずつ小さい数を、$\mathbf{r}$ 個ぶん掛け合わせるんだ。
$_n P_r = n \times (n-1) \times (n-2) \times \dots \times (n-r+1)$
例えば、さっきの例題を記号で表すと…
- 例題1(3枚のカードを3枚とも並べる): $n=3, r=3$ なので、
$_3 P_3 = 3 \times 2 \times 1 = 6$ 通り - 例題2(5人から3人を選んで並べる): $n=5, r=3$ なので、
$_5 P_3 = 5 \times 4 \times 3 = 60$ 通り (5から始めて3個の数を掛ける)
階乗Factorial との関係 (ちょっとだけ紹介)
$n$ 個の異なるものすべてを一列に並べる順列、つまり $_n P_n$ は、 $_n P_n = n \times (n-1) \times (n-2) \times \dots \times 3 \times 2 \times 1$ となるね。このように、1から $n$ までのすべての整数を掛け合わせたものを「$n$ の階乗factorial」といって、$\mathbf{n!}$ と書くんだ。(ビックリマークみたいだね!)
$n! = n \times (n-1) \times \dots \times 2 \times 1$
この階乗を使うと、順列 $_n P_r$ はこんな風にも表せるよ。(詳しい説明は次の「階乗」のページでね!)
$_n P_r = \frac{n!}{(n-r)!}$
例えば、$_5 P_3$ なら、$\frac{5!}{(5-3)!} = \frac{5!}{2!} = \frac{5 \times 4 \times 3 \times 2 \times 1}{2 \times 1} = 5 \times 4 \times 3 = 60$ となるんだ。
階乗については次のページで詳しく説明するから、今は「こんな書き方もあるんだな」くらいで大丈夫だよ。
→ 次のページ「1-4: 階乗(ビックリマーク「!」の秘密)」へ進む
順列の練習問題
問題1:異なる色のボールの並べ方
赤、青、黄、緑、紫、白の6種類の異なる色のボールがあります。この中から4個を選んで一列に並べる方法は何通りありますか?
考え方: 6個の異なるものから4個を選んで並べる順列だね。
記号を使うと、$n=6, r=4$ なので、$_6 P_4$ だ。
$_6 P_4 = 6 \times 5 \times 4 \times 3 = 360$ 通り
答え: 360通り
問題2:3桁の整数作り(0に注意!)
0, 1, 2, 3, 4 の5枚のカードから、異なる3枚を選んで3桁の整数を作るとき、何通りの整数が作れますか?(ただし、百の位に0は使えません)
考え方:
これはちょっと注意が必要な問題だよ。3桁の整数なので、百の位に0は来ないんだ。
- 百の位の選び方: 0以外の数字 (1, 2, 3, 4) から選ぶので、4通り。
- 十の位の選び方: 百の位で使った数字以外の残り4枚のカード (0も含む) から選ぶので、4通り。
- 一の位の選び方: 百の位と十の位で使った数字以外の残り3枚のカードから選ぶので、3通り。
積の法則を使うと…
$4 \times 4 \times 3 = 48$ 通り
答え: 48通り
ポイント: このように、特定の位置に特定のものが使えない、といった「制約」がある場合は、単純に $_n P_r$ の公式だけでは解けないことがあるんだ。制約のある場所から順番に考えていくのがコツだよ!
順列の計算、少し慣れてきたかな?「選んで並べる」イメージをしっかり持ってね!
もっと練習したい?実際にカードを並び替えるアプリもあるよ!
→ 順列トレーニングアプリへ進むこのページで出てきたEnglish wordsとその仲間たち
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Permutation | 順列 | A permutation is an arrangement of objects in a specific order. | ▶ 再生 | 順列とは、特定の順序でのオブジェクトの配置です。 |
Arrange | 配列する、並べる | Please arrange these books alphabetically. | ▶ 再生 | これらの本をアルファベット順に並べてください。 |
Order | 順序、順番 | The order of the numbers matters in a passcode. | ▶ 再生 | パスコードでは数字の順序が重要です。 |
Select | 選ぶ | You need to select three items from the list. | ▶ 再生 | リストから3つのアイテムを選ぶ必要があります。 |
Distinct / Different | 異なる、区別できる | We are using three distinct colors. | ▶ 再生 | 私たちは3つの異なる色を使っています。 |
Factorial | 階乗 | The factorial of 5, written as 5!, is 120. | ▶ 再生 | 5の階乗(5!と書く)は120です。 |