評論文対策問題 109(本文1200字・設問3問×選択肢5+英訳)

本文(抜粋)

「見えているのに、気づいていなかった」
そんな経験は誰にでもある。
毎日通っている道の看板や、部屋の片隅に置かれたもの。
それらは確かに“視界には入っていた”のに、意識にのぼってこなかった。
私たちは「見えているもの=認識しているもの」と思いがちだが、
実際には“見ていないのと同じ状態”で過ごしている場面が多い。
これは、情報が過剰にあふれている現代において特に顕著だ。
見慣れたものは「ある」と認識する前に、意識の外に追いやられてしまう。
また、先入観や期待があると、「見たいように見る」ことが加速する。
たとえば、ある人物に対して「優しい人だ」と思って接していると、
その人の無神経な言動には気づきにくくなる。
見えているはずのものが、見えなくなる。
逆に、ほんの少し意識を変えただけで、今まで見落としていたものが急に立ち上がってくることもある。
世界は常にそこにあるが、それを“どう見ているか”は自分の意識次第なのだ。
「見えているはずのもの」が語りかけてくる瞬間に耳を澄ませること。
それが、自分の思考や視点を更新するきっかけになるのではないだろうか。

【設問1】筆者の主張として最も適切なものはどれか。

  1. 人は見たものをすべて正確に認識している。
  2. 視覚情報は信頼できるため、思考を必要としない。
  3. 目に見えるものは、自動的に意識に届くとは限らない。
  4. 先入観は認識力を高める手段として有効である。
  5. 見えているものには必ず本質が現れている。

【設問2】本文に照らして正しいものはどれか。

  1. 見慣れたものは、かえって意識に強く残る。
  2. 「見たいように見る」傾向は、観察力を深める。
  3. 先入観により、本来の情報を見落とすことがある。
  4. 視覚的な情報は、他の感覚よりも信頼性が高い。
  5. 見逃しは、視力の問題として考えるべきである。

【設問3】筆者が推奨する態度として最も適切なものはどれか。

  1. 見えているものを分析せず、直感を優先する。
  2. 見慣れたものにはあえて注意を払わない。
  3. 視覚よりも聴覚に集中して観察する。
  4. 目に見えるものに対しても、意識的に向き合う努力をする。
  5. 世界の見え方は外部環境によって固定されている。
【正解と解説】

語句説明:
先入観:経験や固定観念から先に抱いてしまう考え。認識を歪める要因として紹介されている。

レベル:共通テスト対策(1200字・設問3)|更新:2025-07-23|問題番号:109


【本文の英訳(要約)】

Seeing doesn’t mean noticing. Familiar things fade into the background. What we expect can blind us to what’s there. Awareness begins where habit ends.