評論文対策問題 108(本文1200字・設問3問×選択肢5+英訳)

本文(抜粋)

私たちは日々、忘れていく。
どんなに鮮やかな記憶も、時間とともに輪郭を失っていく。
だが、ある瞬間、ふとしたきっかけで思い出すことがある。
忘れていたはずの風景、言葉、匂い、感情。
思い出すという行為は、単に記憶を再生するだけではない。
それは、「今の自分」が「かつての自分」に触れ直す行為でもある。
思い出された記憶は、過去のままそこにあるのではなく、
現在の視点から新たな意味を帯びる。
たとえば、昔は何気なく流していた言葉の重みを、今になって痛感することがある。
あるいは、当時は理解できなかった感情が、今では言葉にできるようになることもある。
思い出すとは、ただ懐かしむのではなく、
今の自分を照らすために、過去を呼び起こす行為なのかもしれない。
忘れていたことに再び出会うことで、
変化した自分に気づいたり、
本当は大切だったものを見直したりするきっかけが生まれる。
だからこそ、「思い出すこと」には、未来に向かう力すらあるのだ。

【設問1】筆者の主張として最も適切なものはどれか。

  1. 思い出すことは、過去への逃避である。
  2. 忘却こそが、人間の精神を安定させる。
  3. 思い出すことで、自分の現在や変化に気づくことができる。
  4. 記憶はなるべく固定化して保存すべきである。
  5. 昔の記憶は意味を持たないため、思い出さないほうがよい。

【設問2】本文による「記憶の再発見」として正しいものはどれか。

  1. 過去の記憶は、常にその時と同じ意味を持つ。
  2. 思い出された記憶は、今の視点で再解釈されうる。
  3. 記憶は明確な言語でなければ再現できない。
  4. 思い出す行為は、他人に影響されることがない。
  5. 記憶の価値は、科学的に証明されてはじめて認められる。

【設問3】本文で述べられている「未来に向かう力」とは何を意味するか。

  1. 思い出によって、今の自分を責めることができる。
  2. 記憶を正確に修正し、過去の誤解を解消すること。
  3. 過去の自分との対話を通して、これからの選択に影響を与えること。
  4. 忘れていたことを再現し、他者と比較すること。
  5. 昔の感情を思い出し、同じ失敗を繰り返さないよう戒めること。
【正解と解説】

語句説明:
再解釈:過去に意味づけた出来事や記憶を、別の視点でとらえ直すこと。

レベル:共通テスト対策(1200字・設問3)|更新:2025-07-23|問題番号:108


【本文の英訳(要約)】

Memory returns not as it was, but as we are now. What we once missed may guide us today. To remember is not to rewind— but to reflect, and to move forward with new meaning.