評論文対策問題 106(本文1200字・設問3問×選択肢5+英訳)
本文(抜粋)
「それって普通じゃないよね」
そんな一言で、誰かの行動や考え方が否定されたり、笑いの対象にされたりすることがある。
「普通」という言葉は便利だ。
多くの人が共有している感覚や行動を指して使うことで、安心感や共通性を得ることができる。
けれど、その便利さの裏には、見過ごされやすい危うさもある。
たとえば、自分にとっての「普通」が、他人にとっては「異常」であることもある。
あるいは、集団の中で少数派の価値観や行動が「普通じゃない」とされ、
理由もなく排除されたり、矯正されたりすることもある。
「普通」は決して中立的な言葉ではない。
それは時に、「多数派による正しさの仮面」をかぶる。
もちろん、社会の中で共通のルールや配慮を共有する上で、
「一般的な基準」を持つことには一定の意義がある。
だが、その基準が「当然」「当たり前」の名のもとに絶対視され、
違いを許容する余白を奪ってしまうとき、
「普通」という言葉は誰かを黙らせるための道具になってしまう。
私たちは「普通」という語を使うとき、
それが“誰の基準”に基づくものなのか、
“誰を含み、誰を排除しているのか”に敏感であるべきだ。
そして、互いの“普通”が異なることを前提に対話する。
そうした姿勢こそが、多様な社会を可能にする土台になるのではないか。
【設問1】筆者の主張として最も適切なものはどれか。
- 普通という言葉は社会的な正義を保証する役割を果たす。
- 普通という価値観を明確に定義するべきである。
- 普通という言葉は共感のために積極的に使うべきである。
- 普通という言葉の背後にある排除性に注意を払うべきである。
- 普通は曖昧すぎるため、日常会話では避けるべきである。
【設問2】本文で筆者が述べている「普通」の危険性として適切なものはどれか。
- 「普通」が人間関係を円滑にしすぎること
- 「普通」が思考のスピードを遅らせること
- 「普通」が特定の文化や個人を排除しうること
- 「普通」が過度な自由を許すこと
- 「普通」が個人の正義感を弱めること
【設問3】筆者が推奨する「普通」との付き合い方として最も適切なものはどれか。
- 普通を基準として、すべての行動を調整する。
- 普通の定義を一度固定し、社会で共有すべきである。
- 普通という基準が誰の視点かを問い、異なる価値観を前提に対話する。
- 普通の使用を禁止し、より明確な言葉に置き換える。
- 普通に従えば、差別や偏見は自然と解消される。
【正解と解説】
- 設問1:正解→ 4
「排除の危険性」に注意すべきというのが本文の中心的主張。 - 設問2:正解→ 3
「矯正される」「違いを黙らせる道具になる」と明記されている。 - 設問3:正解→ 3
「誰の基準かを問い、違いを前提に対話する」姿勢が推奨されている。
語句説明:
排除性:ある基準から外れた人や考えを受け入れず、無意識に除け者にしてしまう傾向のこと。
【本文の英訳(要約)】
“Normal” feels safe—but whose normal is it? When used carelessly, it excludes more than it unites. Let’s ask: who defines it, who fits it, and who is left out? Respect grows when we speak from different norms, not just one.