評論文対策問題 104(本文1200字・設問3問×選択肢5+英訳)
本文(抜粋)
矛盾した気持ちを抱くことは、人として“未熟”なことなのだろうか。
ある意見に共感しながらも、その反対の意見にも納得する。
誰かを好きだと思いながら、その人に苛立ちも覚える。
一貫性を重んじる現代において、そうした「揺れ」はしばしば否定的に捉えられる。
けれど本当にそうだろうか。
人の感情や思考は、時に複雑で、簡単に割り切れるものではない。
白か黒かではなく、そのあいだにある灰色を受け止める力こそ、成熟の証なのかもしれない。
自分の中に複数の考えや感情が存在しているとき、それは思考が停止しているのではなく、
むしろ「どちらにも理由がある」と捉えられる想像力が働いている証拠ではないか。
人の矛盾は、そのまま“他者と共に生きる”ための前提にもなる。
自分の中に矛盾を抱えている人ほど、他者の揺れや葛藤にも寛容になれる。
完璧な一貫性よりも、複雑なまま対話を続けることのほうが、
深く豊かな関係を築けることがある。
矛盾を「排除すべき欠陥」としてではなく、「抱えながら考える力」として見直すことが、
今の時代にこそ必要なのではないだろうか。
【設問1】筆者の主張として最も適切なものはどれか。
- 矛盾する感情を抱くことは、人格的な欠陥である。
- 一貫性のない言動は、信頼を失う原因となる。
- 矛盾を認めることは、成熟した思考のあらわれである。
- 矛盾を回避することで、他者との対話が進みやすくなる。
- 感情や思考に揺れがある人は、決断力に欠けている。
【設問2】本文中で述べられている矛盾の効用として適切なものはどれか。
- 他人の矛盾に厳しくなれる。
- 思考を早く切り替えられるようになる。
- 複雑な人間関係を避けることができる。
- 他者の葛藤に対して寛容になれる。
- すべての物事を白黒つけて判断できるようになる。
【設問3】筆者の矛盾に対する姿勢として最も適切なものはどれか。
- 矛盾は整理されるべきで、放置してはいけない。
- 矛盾は排除せず、受け止めながら考え続けるもの。
- 矛盾があると、論理的思考が妨げられる。
- 矛盾とは自己防衛の産物であり、避けるべきである。
- 矛盾が表れるのは、思考力の欠如を示す。
【正解と解説】
- 設問1:正解→ 3
本文では「矛盾を抱えること=想像力や成熟の証」と明示されている。 - 設問2:正解→ 4
「他者の揺れに寛容になれる」と本文に明記されている。 - 設問3:正解→ 2
「排除ではなく、抱えながら考える力」として肯定されている。
語句説明:
一貫性:考え方や行動がぶれずに通っていること。本文では「求めすぎること」への疑問が投げかけられている。
【本文の英訳(要約)】
To feel two things at once isn’t weakness—it’s humanity. Holding contradiction doesn’t mean confusion. It means we see the world in layers, not lines. Maturity lies in thinking through the tension.