評論文対策問題 103(本文1200字・設問3問×選択肢5+英訳)
本文(抜粋)
私たちは日常の中で、言葉を通じて意思を伝えようとする。
会話、説明、主張、感情の表現。
しかし、そうした“語る”行為の裏には、しばしば“語られなかったこと”がある。
「沈黙」とは、何も言わないことではあるが、それが必ずしも“意味のない空白”であるとは限らない。
むしろ、人は時に、語らないことで何かを示そうとする。
相手の話を聞くとき、言葉を飲み込むとき、あるいは反論を控えるとき。
沈黙は、理解、共感、葛藤、怒り、悲しみ……
様々な感情の深まりを内に抱えている場合がある。
また、「黙っていること」が、かえってその人の強い意志や信念を示すことすらある。
言葉で埋め尽くすことが誠実さや明快さであるとは限らない。
沈黙を選ぶという行為は、語らないことで責任を放棄しているのではなく、
あえて語らないという“積極的な選択”として現れることもある。
言葉にしづらい想いや、言葉では伝わらない距離感の中に、
沈黙という表現の余白が生まれる。
沈黙を無意味なものと決めつけるのではなく、
そこにこめられた意志や感情に耳を傾ける想像力を、私たちは持っていたい。
【設問1】筆者の主張として最も適切なものはどれか。
- 沈黙は誤解されやすいため、なるべく避けるべきだ。
- 沈黙は、相手を困らせるための受動的な手段である。
- 沈黙は、語らないことによって感情や意志を表現できる。
- 言葉による表現こそが、あらゆる場面で最適である。
- 沈黙は、主張を放棄した証であり、無責任な行為である。
【設問2】本文で述べられていない沈黙の特徴はどれか。
- 怒りを含んだ沈黙
- 共感の表れとしての沈黙
- 信念を示す沈黙
- 責任から逃げる沈黙
- 言葉で伝えにくい感情の沈黙
【設問3】「沈黙という表現の余白」とは何を意味するか。
- 言葉にするのがめんどうな感情を放置すること
- 話すことを避けることで状況を支配すること
- 言葉にならない感情が沈黙の中に残されていること
- 話題に乗れなかったことに対する反省
- 沈黙のまま物事を忘れようとする態度
【正解と解説】
- 設問1:正解→ 3
「語らないことで意志や感情を伝える」ことが本文の中心的主張。 - 設問2:正解→ 4
「責任の放棄」は否定され、「積極的な選択」として描かれている。 - 設問3:正解→ 3
「言葉にしづらい想い」「伝わらない距離感」に沈黙が宿るとされる。
語句説明:
余白:表面上は空白に見えても、内に意味や感情が含まれているスペース。
【本文の英訳(要約)】
Silence isn’t empty. It can carry empathy, tension, resolve, or grief. Not speaking can be a choice, not avoidance. Sometimes, silence says what words never could.