評論文対策問題 102(本文1200字・設問3問×選択肢5+英訳)
本文(抜粋)
誰かの言葉を使って、自分の考えを表現する。
これは、学問や日常の中で頻繁に行われる行為である。
たとえば、ある有名な哲学者の言葉を引用して、自分の主張を補強する。
または、映画や小説のセリフを使って、今の気持ちを伝える。
こうした「誰かの言葉を借りる」行為は、一見すると自分の意見の放棄のようにも見える。
しかし実際には、それは「思考の対話」への入り口でもある。
他者の言葉を引用することで、その文脈や背景、考え方に一度立ち戻る必要がある。
そして、それを自分なりに再構築することで、単なる受け売りではない「再解釈」が生まれる。
誰かの言葉を「語り直す」とは、その人と向き合い、自分の言葉で改めて意味づけるということだ。
だからこそ、その営みには責任が伴う。
文脈を無視して切り取られた引用は、元の意味を歪めてしまう危険がある。
また、誰かの名言を自分の都合の良いように使うだけでは、表面的な印象しか残らない。
他者の言葉を語るということは、思考を深める道具であると同時に、
それをどう扱うかによって、自分自身の誠実さや知性も問われる行為なのだ。
【設問1】筆者の主張として最も適切なものはどれか。
- 引用は、自分の主張を明確にしないための手段である。
- 誰かの言葉は、自分の文脈から切り離して使うべきだ。
- 引用とは、思考の放棄であり、創造性を損なう行為である。
- 他人の言葉を語り直すことは、自己の思考を深める営みでもある。
- 引用には価値がなく、自分の言葉だけで語るべきだ。
【設問2】本文の内容と一致するものはどれか。
- 名言の利用は、自分の知性を示す確実な手段である。
- 他者の言葉を再構成することは、再解釈の営みである。
- 引用の責任は、著作者ではなく読者にある。
- 引用とは、あらゆる場面で避けるべき技法である。
- 発言者の意図に反して使うことが、引用の本質である。
【設問3】筆者が警告している引用のリスクはどれか。
- 引用することで、読者の理解力が低下すること
- 引用元が特定できなくなること
- 誤って他人の発言とされてしまうこと
- 文脈を無視することで、意味が歪められること
- 誤字脱字による印象の低下
【正解と解説】
- 設問1:正解→ 4
「語り直すことは思考の深まり」と本文で明確に示されている。 - 設問2:正解→ 2
「自分なりに再構築することで、再解釈が生まれる」とある。 - 設問3:正解→ 4
「文脈を無視した引用」は本文中で警告されている危険。
語句説明:
再解釈:他人の発言などを一度自分の視点で捉え直し、新たな意味を与えること。
【本文の英訳(要約)】
Quoting others isn’t giving up your voice. It’s listening, thinking, and responding. To speak someone else’s words with care— is to speak more honestly with your own.