評論文対策問題 101(本文1200字・設問3問×選択肢5+英訳)
本文(抜粋)
インターネット上に一度掲載された情報は、半永久的に残り続ける可能性がある。
学生時代の失敗、若気の至りで書いた投稿、無思慮にタグづけされた写真。
それらが何年経っても検索で表示され、まるで「今の自分」を説明するかのように扱われることがある。
こうした背景のもと、「忘れられる権利(the right to be forgotten)」という概念が注目されるようになった。
これは、自分に関する過去の情報を、一定の条件下でネット上から削除するよう求める権利である。
特にヨーロッパでは、個人の尊厳や再出発の機会を守るために、この権利が法的に認められはじめている。
だが一方で、「公開された情報を後から消せる」ことに対して、表現の自由や知る権利を脅かすと懸念する声もある。
社会全体の利益と、個人の尊厳や時間経過をどう両立させるかという問題でもあるのだ。
人は変わる。
過去に不適切な発言をしたことがあっても、反省し、学び、違う人間になることができる。
だが、検索結果や過去の記録は、変わった「今の自分」とは無関係に、過去の瞬間を永続的に示し続ける。
そのことが、社会復帰や再挑戦を妨げたり、就職や人間関係に支障をきたすこともある。
忘れられる権利とは、過去をなかったことにするためのものではない。
むしろ、「変わる力を持つ人間」を信じるために、過去との距離の取り方を問い直す概念なのだろう。
【設問1】筆者が最も伝えたい主張はどれか。
- 検索技術を制限することで、ネット犯罪を防止できる。
- 過去の発言や記録は、誰でも編集できるようにすべきだ。
- 忘れられる権利は、人間が変わる存在であることを支える考え方である。
- インターネットの記録は、過去の反省材料として残すべきだ。
- 個人情報は全てネットに残すべきでない。
【設問2】「忘れられる権利」をめぐる懸念として本文で述べられていないものはどれか。
- 表現の自由が損なわれること
- ネット運営側の手間が増えること
- 知る権利が制限されること
- 社会全体の利益との両立が難しいこと
- 公開された情報があとから削除されること
【設問3】本文中の「変わる力を持つ人間」とはどういう意味で使われているか。
- 一貫した価値観を維持し続ける人間
- 過去の言動を否定し、記憶から消せる人間
- 他者の評価に左右されず孤立できる人間
- 経験を経て反省し、新しい考え方を持てる人間
- 自分の過去をすべて公開できる人間
【正解と解説】
- 設問1:正解→ 3
忘れられる権利は「変化を認める社会」を支えるという文脈が本文全体の主張。 - 設問2:正解→ 2
「ネット運営の手間」は本文に明示されておらず、他の4つは言及されている。 - 設問3:正解→ 4
「反省し、学び、違う人間になることができる」と明確に述べられている。
語句説明:
忘れられる権利:インターネットなどに公開された個人情報について、一定条件のもとで削除・非表示を求める権利。特にEUで法整備が進む。
【本文の英訳(要約)】
Online data lasts forever—but people change. The right to be forgotten defends the chance to begin again. It does not erase the past, but asks: how long should it define who we are? Forgetting, here, is not denial—it's faith in growth.