評論文対策問題 111(本文1200字・設問3問×選択肢5+英訳)
本文(抜粋)
「それは間違っている。」「こっちの方が正しい。」
こうした言葉は、議論や日常の中で頻繁に使われる。
しかし、その「正しさ」は、果たして誰の視点によるものだろうか。
多くの場合、人は「自分が正しい」と思っているからこそ強く主張する。
だが、社会的・歴史的背景、文化的な文脈、個人の経験によって、
何が「正しい」とされるかは大きく変わる。
一つの立場から見れば当然のことも、別の立場からすれば偏っていることがある。
だからこそ、私たちは「自分の正しさ」そのものを時に疑う必要がある。
それは、自分を否定することではない。
むしろ、「なぜそう考えるようになったのか」と立ち返ることで、
自分の思考や価値観がどこから来ているのかを見つめ直すことになる。
「正しさ」に執着すると、他者の異なる意見を聞き入れづらくなり、
対話が成り立たなくなる。
一方で、「自分の正しさも一つの見方にすぎない」と思えるとき、
他者の声に耳を傾ける余白が生まれる。
疑うことは、思考の停止ではない。
むしろ、思考を開く第一歩なのだ。
【設問1】筆者の主張として最も適切なものはどれか。
- 正しさとは普遍的なもので、状況に左右されない。
- 自分の正しさを疑うことは、自己否定につながる。
- 異なる正しさを受け入れるには、正義感を貫くべきだ。
- 自分の正しさに固執せず、その由来を見直すことが重要である。
- 他人の意見に振り回されず、自分の正義を貫くべきである。
【設問2】本文に照らして正しいものはどれか。
- 自分の正しさを疑うことは、思考停止を意味する。
- 正しさは文化や立場によって変わりうるものである。
- 一つの正義があれば、他の価値観は不要になる。
- 正しさに自信を持てば、他者との対話が進む。
- 自分が信じる正しさは、常に多数派と一致する。
【設問3】筆者が推奨する「対話を可能にする態度」として最も適切なものはどれか。
- 正しさの基準を他者に押しつけること
- 他者の意見に黙って従うこと
- 異なる価値観を相対化する視点を持つこと
- 対話ではなく、討論で相手を打ち負かすこと
- 共通の正義だけに基づいて議論を進めること
【正解と解説】
- 設問1:正解→ 4
「自分の正しさも一つの見方」とする視点が本文の中核。 - 設問2:正解→ 2
「文化的・社会的背景で変化する」と本文に明記されている。 - 設問3:正解→ 3
「正しさを疑うことで、他者の声に耳を傾けられる」と記述されている。
語句説明:
相対化:特定の価値観や視点を、絶対的なものとせず、多様な立場の中の一つとしてとらえること。
【本文の英訳(要約)】
What we call “right” depends on where we stand. To question our own certainty is not weakness—it’s wisdom. Let doubt be the doorway to deeper thought and shared understanding.