評論文対策問題 058(本文1000字・選択肢10個+英訳)

本文(抜粋)

他人の立場に立って考える「共感」は、現代社会において広く肯定的に語られる。
教育や福祉、対人関係のあらゆる場面で、共感は理解や支援の基盤とされている。
しかし、共感には限界がある。
「気持ちがわかる」「わたしも同じ経験がある」と言ったとき、それは本当に相手の感じ方を理解できていると言えるのだろうか。
経験が似ていても、文脈や背景、感じ方は人によって異なる。
共感はしばしば「自分ならこう思う」という想像を相手に投影することで成立しており、知らず知らずのうちに相手の声を奪ってしまうことがある。
また、共感を「分かってあげること」と捉えると、理解できない感情や価値観に出会ったとき、距離を取ったり、拒絶したりする態度を生みやすくなる。
本当に必要なのは、相手を「自分の理解の範囲に収める」ことではなく、「理解できない部分を尊重する」姿勢なのではないか。
共感が大切であると同時に、共感の届かない場所があることを認めること。
そして、分からないものを分からないままに保ちつつ、共にいる想像力を持つことが、より豊かな他者理解へとつながるのではないだろうか。

【問題】

筆者の主張に最も合致するものを選べ。

  1. 共感は他者を理解する最も確実で万能な方法である。
  2. 共感には誤解や押しつけを生むリスクがあるため、なるべく避けるべきである。
  3. 共感できない相手との関係は成立しにくく、距離をとるのが望ましい。
  4. 共感は他者を自分の基準で判断する行為に過ぎない。
  5. 相手の感情は、自分の経験をもとに理解するのが最も自然である。
  6. 他者の経験は、似ていても必ずしも同じ意味を持つとは限らない。
  7. 共感は他者との距離をなくすことで、真の理解を可能にする。
  8. 共感よりも論理的な理解の方が優れている。
  9. 共感を前提とした理解こそが、相手の価値観を否定しない態度である。
  10. 共感と同時に、理解できない他者を尊重する姿勢が必要である。
【正解と解説】

正解:10(と6)

語句説明:
投影:自分の考えや感情を、無意識に他人に当てはめてしまうこと。

レベル:共通テスト対策(長文1000字+英訳)|更新:2025-07-23|問題番号:058


【本文の英訳】

Empathy—putting ourselves in others' shoes—is widely praised today. But empathy has limits. Saying “I know how you feel” can sometimes silence the other person, especially when their experience is more complex than ours. Even similar experiences are shaped by context and emotion. True understanding may lie not in fully “getting” someone, but in respecting what we don’t understand. Empathy should be paired with imagination: the ability to be with someone even when we cannot fully share their experience.