評論文対策問題 056(本文1000字・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
「感情的になるな」「冷静に考えろ」といった言葉は、感情より理性を重んじる考え方を反映している。
確かに、感情はときに人を衝動的にし、冷静な判断を妨げることがある。
だが、感情は本当に「理性に劣るもの」「克服すべきもの」なのだろうか。
私たちが何かに怒るとき、それは多くの場合、自分の中の「正義」や「大切にしたい価値観」が踏みにじられたと感じたからである。
悲しみは「失われたものの大きさ」を知る感覚であり、喜びは「他者や環境とのつながり」を実感する経験でもある。
感情は単なる情緒的反応ではなく、世界に対する深い反応であり、自分が何をどう感じるかを手がかりに、自らの価値や立場を理解する手段でもある。
もし私たちが完全に感情を排除したとしたら、他者の痛みに共感することも、何かに対して「これはおかしい」と立ち止まることもできなくなるだろう。
感情には暴走や誤解のリスクもあるが、それを理由に無価値とするのは、人間という存在を一面的に捉えすぎている。
理性と感情は対立するものではなく、相互に補完し合いながら、「何をどう判断するか」を形づくっている。
むしろ、感情を無視せず、その背景にあるものを読み解くことこそが、より深い理解や判断を可能にするのではないだろうか。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 感情は理性を妨げるため、抑えるべきものである。
- 理性的であることが、判断における唯一の正しさである。
- 感情を信じることは、非論理的な行動を正当化することになる。
- 感情的な反応は共感を妨げ、誤解を生む要因である。
- 感情は価値のある判断材料とはなり得ない。
- 感情は暴走の危険があるため、意思決定に使うべきではない。
- 理性と感情は補い合い、人間の判断に深みを与える。
- 判断には感情を完全に排除することが最善である。
- 感情を使うかどうかは、個人の資質によって決まる。
- 感情を持つことは、人間の弱さの証である。
【正解と解説】
正解:7
- 選択肢1:× 感情は「無視すべきもの」ではなく「理解の手がかり」とされている。
- 選択肢2:× 理性偏重ではなく、感情との協働が重視されている。
- 選択肢3:× 感情の正当性と背景の理解が中心的な主張。
- 選択肢4:× 感情こそが共感の前提とされている。
- 選択肢5:× 「価値がある判断材料」として肯定されている。
- 選択肢6:× リスクは認めつつも、「排除すべきではない」とされる。
- 選択肢7:◎ 理性と感情の「相互補完性」が筆者の主張の核。
- 選択肢8:× 完全排除の姿勢に対して批判的。
- 選択肢9:× 感情はすべての人に必要とされる要素として論じられている。
- 選択肢10:× 感情は「人間らしさ」の一部として肯定的に捉えられている。
語句説明:
相互に補完する:それぞれが足りない部分を補い合って、より良い結果を生む関係にあること。
【本文の英訳】
“Don't be emotional,” “Think calmly”—such phrases suggest reason is superior to feeling. While emotion can cloud judgment, it also reveals our values, priorities, and humanity. Anger often stems from a sense of justice, sadness from deep loss, joy from connection. Emotion isn't a flaw—it is a lens through which we engage with the world. Without it, we lose empathy and the ability to question injustice. Rather than eliminating emotion, we should understand what lies beneath it. Emotion and reason do not conflict—they complement each other in guiding our decisions.