評論文対策問題 093(本文1000字・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
他人の気持ちを思いやること、共感すること、相手の立場で考えること。
それは人間関係を築くうえでとても大切な姿勢だ。
けれども時に、そうした「他者への開かれた感受性」が、自分自身を見失わせることもある。
誰かの期待に応えようとしすぎて、自分の本心がわからなくなったり、相手の悲しみに寄り添いすぎて、自分まで苦しくなってしまったり。
人とつながることは素晴らしい。だが、そのためには「つながりすぎないこと」も必要なのだ。
境界とは、誰かを拒むための壁ではなく、「自分と他人の違いを尊重するための線引き」だ。
「ここまではあなた」「ここからはわたし」と分けることで、かえって関係はしなやかに保たれる。
自分の気持ちや責任、自分の限界を守るためには、意識的に境界を引く必要がある。
共感やつながりの時代だからこそ、「それでも分かり合えないものもある」という前提から出発することが、実は誠実な関わり方なのではないだろうか。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 境界を引くことは、他人を拒絶する態度にすぎない。
- つながることに限界はなく、境界線は不要である。
- 共感を深めるには、自分の感情を手放す必要がある。
- 境界を持たないことで、より深い信頼関係が築ける。
- 他人と完全に分かり合えない以上、関係を断つべきである。
- 共感よりも論理を優先することが、現代的な関係である。
- 境界を引くことは、自分と他人の違いを尊重する行為である。
- 人間関係では、常に他人を優先すべきである。
- 相手と関わるには、まず共感を捨てることが求められる。
- 他人の感情に共鳴するほど、自分の感情は無意味になる。
【正解と解説】
正解:7
- 選択肢1:× 境界は拒絶ではなく「尊重の線引き」とされる。
- 選択肢2:× 境界がなければ自分を見失う可能性があるとされる。
- 選択肢3:× 感情を手放すよりも、「境界を守る」ことが重要とされる。
- 選択肢4:× 境界があってこそ関係が「しなやかに保たれる」とされる。
- 選択肢5:× 分かり合えなくても「関わること」は可能とされている。
- 選択肢6:× 共感の価値は否定されていない。
- 選択肢7:◎ 境界=「違いの尊重」→本文の中心主張と一致。
- 選択肢8:× 常に優先することは「自分を見失う」ことにつながる。
- 選択肢9:× 共感は否定されておらず、前提として大切にされている。
- 選択肢10:× 共鳴が過度なときに苦しさが生じるが、否定はされていない。
語句説明:
しなやか:柔軟で、こわれずに形を変えられるさま。関係性の安定性を表す比喩として使われる。
【本文の英訳】
Empathy is important—but not endless. We lose ourselves when we blur too much. Boundaries aren’t walls. They are bridges. They say: “This is me, and that is you.” From that distance, respect begins.