評論文対策問題 091(本文1000字・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
「覚えておくこと」が良いことで、「忘れること」は悪いこと。
私たちは、どこかそうした価値観に縛られてはいないだろうか。
たしかに、学んだことを覚えておくこと、相手の名前や言葉を忘れないことは、信頼や成果につながる。
しかし一方で、人間には「忘れる力」も備わっている。
嫌な記憶、傷ついた過去、取り返せなかった後悔——そうしたものを少しずつ手放すことで、再び前に進むことができることもある。
「忘れたいのに忘れられない」
そんな苦しみがある一方で、「気づいたら忘れていた」ことが救いになる場合もある。
忘れることは、怠慢ではない。
むしろ、自分の心を守るための、大切な機能かもしれない。
覚えていなくてもいいことを、無理に抱え続ける必要はないのだ。
「全部を記憶し続けること」よりも、「必要に応じて忘れること」が、人間にとって自然で健やかな営みなのではないだろうか。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 忘れることは、人としての誠実さを欠く行為である。
- 嫌な記憶も含め、全てを覚えていることが人間のあるべき姿である。
- 忘れるという行為は、学習能力の欠如を意味する。
- 忘れたことを後悔するより、記憶にしがみつくべきである。
- 忘れることは、自分を守るための自然な働きでもある。
- 人間には、本来「忘却する力」は備わっていない。
- 記憶を全て保存し続けることが、心の安定につながる。
- 忘れることを避けるため、記録媒体にすべてを残すべきである。
- 重要でない記憶ほど、意識して保持するべきである。
- 忘れることは、人間関係を損なう危険をはらむ。
【正解と解説】
正解:5
- 選択肢1:× 忘れることは「誠実さの欠如」とはされていない。
- 選択肢2:× 嫌な記憶は「手放すこと」が癒しになるとされている。
- 選択肢3:× 忘却は「学びの欠如」ではなく「心の防御機能」とされる。
- 選択肢4:× 記憶への執着より「必要に応じて手放す」ことが肯定されている。
- 選択肢5:◎ 忘れること=自然で健やかな営みと明言されている。
- 選択肢6:× 忘却は「人間に備わっている力」とされている。
- 選択肢7:× 記憶の保持ではなく、適度な忘却が勧められている。
- 選択肢8:× 忘れることを「完全に防ぐ」必要はないとされる。
- 選択肢9:× 重要でない記憶は「無理に抱えなくていい」と述べられる。
- 選択肢10:× 忘れることで救われることもあると肯定される。
語句説明:
しがみつく:執着して離れようとしないこと。
【本文の英訳】
We praise memory, fear forgetting. But forgetting isn’t failure. It’s how we let go, heal, and move on. Some things fade—for a reason. To forget can be the mind’s way of saying: “You don’t need to carry this anymore.”